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「隠れ増税 なぜあなたの手取りは増えないのか」 複雑でつかみ難い実態にメス

隠れ増税 なぜあなたの手取りは増えないのか [著]山田順

 本書の題名は国民の見えないところで決まったり、いつの間にか負担増になっていたりする実質的な増税を指す。
 日本の税制はあまりに複雑で税金の種類も多過ぎることから、その実態が庶民にはつかみ難い。また会社が年末調整によって給与所得控除などの手続きを代行してくれるので、サラリーマンの多くは確定申告をしない。これらが「隠れ増税」が見逃される主な原因になっているという。
 そこにメスを入れるため、本書は「サラリーマンの給与所得控除の上限設定」や「配偶者控除の見直し」など、最近の税制改正を対象にシミュレーションを行い、これらの措置が実際は納税者にとって得か損かを明らかにする。
 本書によれば日本政府の年中行事と化した税制改正は、最早(もはや)「増税」と同義という。それを行う官僚や政治家に決定的に欠けているのは、「倹約する」「経費を削減する」という視点だ。
 2017年度の一般会計予算は100兆円に迫り、その約40%が国債。アダム・スミスは「国債は税金手形」と語ったが、まさに隠れ増税の典型という。手遅れになる前に、税金とこの国のあり方について、私たちはもっとよく考えるべきだと本書は説く。=朝日新聞2017年4月23日掲載