「うみべのこねこ」
海辺に捨てられたこねこ。空のかもめを見て、飛ぶことに憧れます。ひとりぼっちだったこねこは相棒のかにと出会い、いくつかの失敗を経て、夢見ていた飛ぶことに成功します。そして、新しい世界に胸を躍らせながらさっそうと海辺から旅立つのでした。
奇をてらった展開は一切ありません。しかし、ぐっと、子どもの目線でつづられたシンプルな文章は安心感があり、夢、友情、試練、成長など、この小さな物語の中に詰まったテーマが直球で心に響きます。もともとは30年ほど前に月刊絵本として書き下ろされたものですが、言葉の持つ強さは時間がたっても色あせません。きっと今の子どもたちの心にも、しっかり寄り添ってくれるはずです。(丸善丸の内本店 児童書担当 兼森理恵)
★宇野克彦作、西川おさむ絵、ひさかたチャイルド、税抜き1300円、4歳から
「大根はエライ」
普段、何げなく見たり食べたりしている大根がこんなに「すごい」野菜だとは気づかずにいた。一年中売られていて、安く、肉にも魚にも他の野菜にもふしぎになじむことから、「相手の味を引き立てたり、やわらげたり」「イイ味出してる」という作者の言葉には、なるほどと合点がいく。ふしぎを知って世界が広がる1冊。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫)
久住昌之文・絵、福音館書店、税抜き1300円、小学校中学年から
「熊とにんげん」
喜びと美しさと愛と悲しみがたっぷりつまった絵物語。主人公は踊る熊と、熊と一緒に旅をする「熊おじさん」。おじさんはお手玉の名手で、熊にお話を聞かせ、季節の変化を楽しみ、角笛で澄んだ音を奏でる。心に響く名訳で、人間が生きるうえで必要なものは何かを考えさせてくれる。(翻訳家 さくまゆみこ)
★R・チムニク作・絵、上田真而子訳、徳間書店、税抜き1400円、小学校高学年から=朝日新聞2018年2月24日掲載