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池上冬樹が薦める文庫この新刊!

  1. 『スペードの3』 朝井リョウ著 講談社文庫 691円
  2. 『色(いろ)いろ花骨牌(はなカルタ)』 黒鉄ヒロシ著 小学館文庫 648円
  3. 『その犬の歩むところ』 ボストン・テラン著 田口俊樹訳 文春文庫 886円

 (1)は、元スター女優と、そのファンクラブのまとめ役と、ファンクラブの新メンバーたちが織りなす群像劇。さりげなく巧みに時系列をかえ、ピースを組み合わせるようにして場面を鮮やかに印象づける。女たちの屈折した自意識と見栄(みえ)と欲望が絡まりあう、予想外の展開も見事だ。
 (2)は、作家の吉行淳之介、阿佐田哲也、柴田錬三郎、俳優の芦田伸介など九人との交友を綴(つづ)ったエッセー。颯爽(さっそう)としていて人懐っこく、それでいてさらりと距離をとる。独特の距離のとり方が小説や演技、人生の陰影に繋(つな)がる。包容力豊かなユーモアがいい。
 (3)は、人間の善意と愛をもっともよく理解する犬が、様々な人々の魂を生き返らせる物語。孤独の闇の中にいて気づかずにいた他者の思いにふれ、忘れていた夢・新たな夢を抱かせてくれる。犬と“悲しみとさよならの川”を遡(さかのぼ)りながらも、それでも生きる喜びがあることをたっぷりと教えてくれる。相変わらずテランの文章は詩的で力強く、読む者の心を何度も揺さぶる。必読の傑作!=朝日新聞2017年06月11日掲載