ジュンパ・ラヒリ「べつの言葉で」書評 不完全であるという自由
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年11月11日
べつの言葉で (CREST BOOKS)
著者:ジュンパ・ラヒリ
出版社:新潮社
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784105901202
発売⽇: 2015/09/30
サイズ: 20cm/136p
べつの言葉で [著]ジュンパ・ラヒリ
ジュンパ・ラヒリが20年以上学んでいるイタリア語で初めて書いたエッセー集。
英語という「大邸宅」を捨て、なぜ「仮小屋」のイタリア語で書くのか。「創造という観点からは、安全ほど危険なものはない」。イタリア語で書く時、「不完全であるという自由」があるのだという。
幼少時に渡米し、英語とベンガル語の狭間で「祖国も真の母国語も持たない」ことを欠陥だと思いながら育った。だが、そこに新たな言語が加わることで、2つの言語に対しても、自分に対しても理解が深まっていく。複数のアイデンティティーを持ち、「不確かさに源を持つ」からこそ、創造への衝動が生まれているのだと発見する過程が胸を打つ。
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中嶋浩郎訳、新潮社・1728円