76人の作家の200点超す原画を公開
会場に足を踏み入れると、名作の原画がずらりと並ぶ。大島弓子『綿の国星』、成田美名子『CIPHER』、清水玲子『輝夜姫』、津田雅美『彼氏彼女の事情』、緑川ゆき『夏目友人帳』、葉鳥ビスコ『桜蘭高校ホスト部』、あきづき空太『赤髪の白雪姫』……。総勢76人の作家による原画は200点以上。時代ごとにわかれた5部構成の展示を通し、どの世代の読者にとっても心ときめく少女マンガの世界が広がる。
まず目を奪うのは、創刊号の表紙を飾った山岸凉子や木原敏江、青池保子らレジェンドたちによるカラー原画の数々。初期に、知的で斬新な「LaLa」というイメージを印象づけた原画は、今見ても個性豊かだ。
「LaLa」は、少女マンガにおけるSFやファンタジーを牽引してきた雑誌でもある。「LaLa」からデビューしたひかわきょうこ、樹なつみ、清水玲子らによる精妙なイラストは圧巻。現在も大人気連載中の『赤髪の白雪姫』や異色の異世界転生ラブコメディ『転生悪女の黒歴史』に至るまで、読者の心を揺さぶり続ける独自の世界観をたっぷり味わうことができる。
手描きならではの熱量と、作家たちの「声」に触れる
今回の展覧会の最大の特徴は、白黒のマンガ原稿ではなく、雑誌掲載時の扉絵など、貴重なカラー原画を中心に構成されていること。花やファッションに彩られたキャラクターたちの表情は、実に鮮やかだ。手描きの原稿からは、印刷では伝えきれない色彩感とともに作家たちの試行錯誤のあとも伝わってくる。平岡編集長も「編集者が原画を受け取った時の感動を、読者の皆さんにも味わってもらえる展示」と話す。
もう一つの見どころは、本展のために寄せられたマンガ家たちのコメント。大島弓子が『綿の国星』の創作裏話を明かしているのは素敵なサプライズだが、その他にも多くのマンガ家が自作へのコメントを寄せている。連載当時を振り返ったり、執筆時の苦労や工夫を語ったり。懐かしい作品について作者とおしゃべりをするような、ファンにはたまらないガイドだ。うれしいことに、これらのコメントは公式ヴィジュアルブックにも収められている。
会場を彩る展示は原画だけにとどまらない。歴代のふろくやグッズが並ぶコーナーやフォトスポット、名作誕生の裏側を当時の担当編集が明かすミニパネルや、創作の過程をうかがわせる貴重な「ネーム」など、多彩な展示が空間を埋めつくしている。
後発誌だからこそ挑み続けた「新しい少女マンガ」
歴史を振り返ると、「LaLa」創刊は1976年。少女マンガのテーマや表現が加速度的に広がった時代だ。当時の白泉社は73年に創業したばかりの新しい出版社で、中でも「LaLa」は「花とゆめ」に次いで2番目にできた少女マンガ誌だった。そんな「後発」の雑誌だったからこそ、編集部も新しい少女マンガへの挑戦に貪欲だったという。「恋愛中心だったそれまでの少女マンガとは違う、新しくて、より普遍的な少女マンガを創刊時から探求してきた」と平岡編集長は語る。
「たとえば連載中の『夏目友人帳』では、人と、妖怪という異種との交流が描かれている。自分とはまったく違う他者を受け入れていくというテーマは、少女マンガらしさもあるが、同時に性別にかかわらず多くの人の心を動かす普遍的なテーマでもある。こうした普遍性と新鮮さとをあわせもつおもしろいマンガを、これからもどんどん世に出していきたい」。
読者にとって、雑誌で連載マンガを読むことは、ある時期の人生をともに過ごすようなかけがえのない体験だ。マンガ家と編集部が紡いできた50年の歴史に触れるとき、私たちは世代を超えてあの頃のときめきを共有し、新たな傑作との出会いに再び胸を躍らせることになる。懐かしさの先にある、少女マンガの未来をも照らすような濃密な展覧会だ。