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すべての事象がフラットな時代

「平成」論 (青弓社ライブラリー) 著者:鈴木 洋仁 出版社:青弓社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

価格:1728円
ISBN: 9784787233752
発売⽇: 2014/04/25
サイズ: 19cm/238p

平成に漂う「わからなさ・手応えのなさ」と向き合い、平成を捉えるための視点とことばを獲得せんともがきながら思考する愉快を宣言する。「平成的とはどのようなことか」に迫る、天皇…

評者:本郷和人 / 朝⽇新聞掲載:2014年07月06日

「平成」論 [著]鈴木洋仁

 他者に意志を伝えるとき、「高さ」は相当に大事な要素となる。学生や聴衆より一段高いところに立って話す。するとビックリするほど場の隅々まで見通せるのだが、聞き手からの反応は鈍くなる。意見を「申し上げる」体になるためか。一方で、平坦(へいたん)なところから、則(すなわ)ち同一の目線で話しかけると、活発な意見交換が期待できる。ところが今度は全体に目が配れない。声はすれども姿は見えず、である。
 著者は平成を「オレがオレが」の時代、一人一人が主体性を入手して一斉に発言する時代であると捉える。すべての事象は「フラットである」、すなわち秩序なく雑然と横並びに存在するが、これを「平成的である」と評価し、そのさまを的確に描写していく。フラット(平坦)であるものへの適切な対応は、右に述べたとおり、なかなかに困難である。経験的に痛感しているので、著者の腕の確かさには、とても驚かされた。
 私たちが不況のただ中にあることは、何とはなしに合意ができている。ところが「平成不況」「バブル崩壊後」「失われた十年」など、それを表現する言葉は互いに整合性をもてず、議論はかみ合わない。
 他の分野には合意すら見出(みいだ)せない。歴史は冗長になり、文学は拡散し、ニュース報道は「ツマラナ」くなり、批評はレビューにかたちを変えた。それぞれ、いっときはキーワードが立ち現れるが、十分に吟味されぬまま、ひたすら消費され、忘れられていく。
 全体を統合するシステムは、どうやらなさそうだ。それを実生活の中で感得した著者は、高みに昇って分析を試みるのではなしに、フラットであることを選択する。雑踏のただ中に分け入り、身もだえしながら考察を進めていくのだ。そして著者は再び言う。これこそが「平成的」なのだ、と。私には、それはきわめて、誠実な方法と思えた。若者らしい生真面目さに溢(あふ)れた、好感のもてる一冊といえよう。
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 青弓社ライブラリー・1728円/すずき・ひろひと 80年生まれ。国際交流基金に勤務。専攻は歴史社会学。