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孤立と困窮の連鎖を断ち切る

居場所を探して 累犯障害者たち 著者:長崎新聞社「累犯障害者問題取材班」 出版社:長崎新聞社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

価格:1728円
ISBN: 9784904561614
発売⽇:
サイズ: 19cm/328p

【新聞協会賞(平成24年度)】障害があり犯罪を繰り返す人たちの実像とその更生を目指す挑戦の記録。刑事司法の常識を打ち破る累犯障害者支援の試み「長崎モデル」についても紹介す…

評者:中島岳志 / 朝⽇新聞掲載:2013年01月27日

居場所を探して 累犯障害者たち [著]長崎新聞社・累犯障害者問題取材班

 知的・精神障害がありながら福祉の支援を受けられず、結果的に犯罪を繰り返す「累犯障害者」。服役中の知的障害者の7割が再犯者で、3人に1人は出所後3カ月以内に再び罪を犯すという。『長崎新聞』の連載はこの問題にスポットライトを当て、2012年度新聞協会賞を受賞した。
 累犯障害者は出所後、孤立と生活困窮に苦しむ。冷たい地元、追いつめられる家族。受け入れ先となる福祉施設は少なく、結果として再び犯罪に手を出す。
 累犯障害者への偏見は根強い。福祉の現場では「扱いにくい人」を避ける「選別」が存在する。行き場を失った累犯障害者は、福祉に接続できなかった「責任」や「報い」を背負わされる。
 時に障害は見えにくい。高次脳機能障害は、その人の性格に還元され、「変な人」「怠け者」と誤解される。周りから非難され、突き放される。疎外された彼らは路頭に迷い、また刑務所に戻ってくる。
 この負の連鎖をいかに断ち切るのか。罰だけで更生につながるのか。
 長崎では、累犯障害者を支援する取り組みがスタート。福祉施設で生活習慣や人間関係を構築し、再犯防止に努める。支援を出所後だけでなく、検察や裁判所の段階から強化する。裁判所には執行猶予を求め、福祉施設での更生を目指す。取り調べには、福祉の専門家が立ち会う。この「長崎モデル」は、累犯障害者に居場所を作る試みとして、注目を集めている。
 国のあり方は、弱い立場の人への施策に典型的に表れる。日本は、あらゆる領域で「長崎モデル」を応用すべきだろう。人間のアイデンティティーは、誰かに必要とされているという実感によって支えられる。実存の底が抜けた社会で、新しい居場所を作ろうとする試みこそ、拡大すべきだ。
 長崎を抱きしめたい。
    ◇
 長崎新聞社・1680円/11年7月から12年6月まで掲載した連載を収録。12年度新聞協会賞受賞。