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人生と経済の盛衰を重ねる

修羅の宴 上 (講談社文庫) 著者:楡 周平 出版社:講談社 ジャンル:一般

価格:745円
ISBN: 9784062930307
発売⽇: 2015/02/13
サイズ: 15cm/301p

大手銀行から出向し、三百億円もの累積赤字にまみれていた老舗の専門商社をたった二人で再建した敏腕社長、滝本。高卒という自身の学歴コンプレックスをばねに、未踏のビジネスを開拓…

評者:逢坂剛 / 朝⽇新聞掲載:2012年09月23日

修羅の宴 [著]楡周平

 これは、第一次オイルショックさなかの1974年から、バブル景気崩壊までの約20年間を疾走する、重厚長大な経済小説である。
 いづみ銀行の取締役、滝本哲夫は業績の悪化した繊維商社、浪速物産の立て直しを頭取の鏑木修次郎に命じられ、社長として出向する。高卒入社の滝本は、銀行にもどっても頭取にはなれないことを自覚し、浪速物産を自分の牙城(がじょう)にする決心を固める。
 その結果、わずか2年で再建に成功した滝本は、浪速物産をわがものにしようと、さまざまな手段を弄(ろう)して業態を広げる。そのため、愛人の小料理屋の女将(おかみ)、下村桐子に因果を含めて、自社の労組幹部の内輪話を、報告させたりもする。不動産や、町金融まがいの仕事にも手を出し、着々と地盤を固めていく。その、えげつないほど強引なやり口が、生きいきとした大阪弁の会話で進められ、滞るところがない。
 バブル景気に乗って、地上げをてこにさらに大きなプロジェクトを計画中、滝本は思わぬ落とし穴にはまる。新たに、役員として迎えた真田の口車に乗り、多大の欠損を出してしまうのだ。このあたりのいきさつは、ある程度専門的な知識を必要とするが、著者はそれを分かりやすく会話で処理し、疾走感を失わない工夫をしている。
 若い女に取り込まれ、長年の愛人桐子と別れたあと、滝本の運勢もしだいに傾き始めて、ついに経営に破綻(はたん)をきたす。その上、目をかけた部下にも反旗をひるがえされ、取締役会で社長を解任されてしまう。さらに、自社株の買い占め、粉飾決算などが罪に問われ、懲役7年の判決を受ける。その、年老いた孤立無援の滝本に、手を差し伸べようとする桐子に、読者はいささかの救いを感じるだろう。
 この小説は、激動期を生きた滝本個人の栄枯に託して、日本経済そのものの盛衰を描いた、渾身(こんしん)の力作である。
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講談社・1890円/にれ・しゅうへい 57年生まれ。作家。著書に『虚空の冠』『羅針』など。