「野生哲学―アメリカ・インディアンに学ぶ」書評 自然を克服しようとした文明の限界
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2011年06月26日
野生哲学 アメリカ・インディアンに学ぶ (講談社現代新書)
著者:管 啓次郎
出版社:講談社
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784062881074
発売⽇:
サイズ: 18cm/248p
野生哲学―アメリカ・インディアンに学ぶ [著]管啓次郎、小池桂一
北アメリカ先住民の一つイロコイ族は、何事かを決めるときにはその決定が与える影響を7世代先まで考慮しなければならないとしていたという。原発事故によって、われわれは当座の繁栄と引き換えにいかに割の合わないギャンブルに参加させられていたかを思い知らされた。掛け金は子孫の未来だったのである。
震災前に書かれた本書は、極端な反科学主義に陥ることなく、抑制された筆致で、自然を征服しようとした先進国の文明の限界を問うている。管啓次郎の本文とともに、小池桂一による46ページの描き下ろしマンガ「太陽の男と大地の女」を収録。新書判サイズとは思えないイメージの広がりに圧倒される。(講談社現代新書・840円)