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夏休み、ココロに深く

 いよいよ夏休みも本番。思い出に残る出会いや戦争を考える機会が本の中に広がっています。選者が選ぶ、この夏おすすめの8冊です。(○=新刊、●=既刊、価格は税抜き)

「母が作ってくれたすごろく ジャワ島日本軍抑留所での子ども時代」(徳間書店)

 第2次世界大戦中、オランダの植民地だったインドネシアを日本軍が占領。8歳のオランダ人少女だった作者は、母と姉弟とともに日本軍の抑留所に入れられます。ぼろぼろになった母手製のすごろく、抑留所の生活を描きとめた絵などを通して、子どもの目で見た戦争体験を綴(つづ)るドキュメント絵本です。誰が正義で誰が悪でなく、異なる視点から戦争を知り、平和を考える夏に=小学校中学年から(アネ=ルト・ウェルトハイム文、長山さき訳、1600円)

「はなびドーン」(童心社)

 夜空に「シューッ」と光の線。ぺージをめくると「パンッ」「ドーン」と弾ける花火。いろんな色や形に広がります。花火の音と光の間が、赤ちゃんの好きな2拍子のめくりのリズムにぴったり。親子でうっとりくつろいでください=0歳から(カズコ G・ストーン作、950円)
 【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「ナチスに挑戦した少年たち」(小学館)

 第2次世界大戦中のデンマーク。ドイツ占領下で、その状況に甘んじている大人たちに反発し、行動を起こす少年たち。いつしかそれは国をも変えていく。彼らの危うい抵抗運動、少年らしい異性への思いや戦争に対する考えと受けた傷あと。衝撃的な真実の記録、しっかり見つめて欲しい=小学校高学年から(フィリップ・フーズ作 金原瑞人訳、1500円)

「むしプロ」(教育画劇)

 なんとね、虫のプロレスなんです。熱い実況に手に汗握る、木の汁をかけてカブトムシとクワガタの戦いは夜通し続く。最終試合はカブトとノコギリの白熱戦。勝者はどちらだっ?!というところにあらわれたのは……。リアルなカブトとクワガタは迫力満点。虫好きの子供たちに愛されること間違いなしの一冊=4歳から(山本孝作・絵、1000円)
 【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

「はなびのひ」(佼成出版社)

 子ダヌキのぽんきちは、今夜は花火職人の父親がでかい花火をあげるというので、朝からそわそわ。そのうち母親から、父親に握り飯を届けてくれと言われて、ぽんきちは勇んで出かける。その後ろから、もう花火が始まるのかと勘違いした、ご近所さんがぞろぞろ。動物たちで描く江戸の花火大会の絵本=幼児から(たしろちさと作・絵、1300円)

「フラダン」(小峰書店)

 男子高校生の主人公が、強引な勧誘を受けてしぶしぶのぞいてみたフラダンス愛好会は、なんと女子ばかり。と、そこへ個性バラバラなほかの男子3人も入ってきて、「フラガールズ甲子園」に向けた特訓が始まってしまう。笑いながらぐんぐん読める青春小説だが、福島を舞台に、多様な人々とのふれ合いや原発事故のその後をめぐる状況も描かれていて、味わいが深い=中学生から(古内一絵作、1500円)
 【翻訳家 さくまゆみこさん】

「ドエクル探検隊」(福音館書店)

 動物に詳しい作者だからこそ書けた冒険心をくすぐる長編ファンタジー。小学校卒業の記念に竜二とさゆりは、風おじさんの家に招かれる。動物の言葉がわかるおじさんは、いろんな動物とくらしていた。ナスカ王国の聖堂につかえるフクロウを通じて、化石動物が今も生きているかもしれないことを知った一行は旅に出る=小学校高学年から(草山万兎作、松本大洋画、3500円)

「トムは真夜中の庭で」(岩波書店)

 ひと夏のふしぎな体験を通して大きく成長していく少年の物語。夏休み、弟がはしかになったため1人だけで親戚の家に預けられることになったトム。ある晩、大時計が13回打つのを聞いて、外に出てみると、そこには素晴らしい庭園が広がっていた。ラストの展開が胸を打つ=小学校高学年から(フィリパ・ピアス作、高杉一郎訳、1900円)
【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】=朝日新聞2018年7月28日掲載