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読み終えて本を抱きしめたくなった 北香那さん「ペンギン・ハイウェイ」で声優初挑戦

文:永井美帆、写真:有村蓮

 ある夏、ちょっと大人びた小学4年生のアオヤマ君が住む街に、突如ペンギンが現れ、消えた。その謎を解明すべく、クラスメートと研究を始めたアオヤマ君は、通っている歯科医院の“お姉さん”が投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。少し不思議で、忘れられないひと夏の冒険物語。森見登美彦の小説『ペンギン・ハイウェイ』がこの夏、劇場版アニメになった。

 監督は、学生時代に発表した「フミコの告白」で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞など国内外の賞を多数受賞した石田祐康(30)。作画はスタジオジブリ出身の新井陽次郎(29)。気鋭のクリエーターが組んだ。

© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 アオヤマ君の声を演じたのは、今回が声優初挑戦となる北香那さん。本好きの一家で育った北さんは、祖父から借りて、原作本を読んだことがあった。「初恋や友情、生きることの意味など、子供の頃に感じたいろんな要素が詰まった作品。読み終わった後、思わず本を抱きしめたくなりました」

 2010年に日本SF大賞を受賞した人気作。20歳の女性である北さんが、小4の男の子の声を演じることにはプレッシャーもあったという。努力家で探究心旺盛なアオヤマ君さながら、北さんも様々な人のアドバイスをもとに、声のイメージを固めていった。

 「アフレコ前、当時小4だった妹の授業参観に行きました。男の子が話す声のトーンを直接聞きたくて。さすがにアオヤマ君みたいな子はいなかったけど、やたらと手を挙げたがる子とか、国語の音読をわざと本を見ないでする子とか、一生懸命アピールする姿がかわいいんです。アオヤマ君も賢いけど、お姉さんの胸の膨らみについて真剣に考えているところとか、小学生らしいかわいさもあって。そんな部分も表現できたらと、最初はちょっと滑舌を悪く、子どもっぽい話し方をしました。そうしたら、音響監督さんに『もう少しだけ大人っぽいイメージで、小6だと思って話して』と言われ、徐々に修正していきました」

 お姉さん役の蒼井優さんからは「もともと声優さんかと思うくらい、完璧でした」と大絶賛された。ところが、アフレコ最終日、思いもよらないハプニングが待っていた。「初日に録音したシーンを聞き返したら、声が全然違ったんです。アオヤマ君じゃなく、私がしゃべっている感じ。慌てて頭から録(と)り直しました。だから、冒頭のモノローグの場面は、実は最終日に録音した声なんです」

 無限の可能性を秘めた少年の目線で描かれる、ひと夏の冒険。この作品を通じて、北さんにも幼い頃の夏の思い出がよみがえってきたと話す。「三つ上の兄と森を探検したり、ウシガエルを捕まえたり。まだ妹が小さかったので、どこに行くにも兄と一緒。アオヤマ君みたいな大きな冒険じゃないけど、あの頃って初めてのことばかりで、毎日がキラキラしていたな」

 家族と暮らす北さんの家には大きな本棚があり、一家で本を共有しているという。「近所に住む祖父が本好きで、よく母親が借りてきて、本棚に並べていくんです。『ペンギン・ハイウェイ』もこの本棚で出会いました」。普段読む本も家族の影響が大きい。「昔からずっと読んでいるのがギャグ漫画の『浦安鉄筋家族』シリーズ。三兄妹みんな好きで、回し読みしながら大笑いしています。最近だと、母からすすめられた『自殺島』という漫画にもはまりました。自殺未遂者が孤島に送り込まれるという、重い話なんですけど。家族だからか、不思議と趣味が似ているんですよね」

 家族も公開を心待ちにしているという。「祖父はこんな感じで、よくやった!って」。大きく手をたたいて再現してくれた。「見たら何て言ってくれるかな。早く感想が聞きたいです」