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抜刀斎モードの剣心がカッコいい♡ パラバドミントン・豊田まみ子さん(前編)

文:熊坂麻美、写真:佐々木孝憲

和月伸宏「るろうに剣心」(集英社、全28巻)

 ネイビーのオールインワンに青いピアス。ロングヘアをおろし、ナチュラルメイクでほほ笑む姿は、可憐そのもの。「ジャージのほうがよかったですか? 普段はだいたいこんな感じなんですよ」。そう言ってカメラの前に立つのは、パラバドミントンで2020年の東京大会を目指す豊田まみ子さん。手にしているのは、お気に入りの漫画『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』。

 この作品は、幕末に「人斬り抜刀斎」として暗躍した伝説の剣客・緋村剣心が、さまざまな人との出会いや戦いを重ねて、新しい生き方を模索していく物語。江戸末期から明治初期の日本を舞台に史実とリンクする部分もあり、山縣有朋や新選組など実在した人物も登場する。1994年から「週刊少年ジャンプ」で連載され1999年に完結。アニメや実写映画の作品も人気を博し、ファン待望の続編が昨年から「ジャンプスクエア」で始まった。

 読み始めたのは「漫画オタク」というお母さんの影響だ。

 「母は漫画全般、特に少女漫画が大好きで、実家の本棚には漫画がたくさん並んでいます。今回、漫画の取材を受けることを母に話したら、『きょうは会社休みます。』とか『orange』とか『アオハライド』とか、頼んでないのにいろいろ挙げてきて(笑)。恋愛のドキドキに浸れる少女漫画は私も好きなんですけど、やっぱり『るろうに剣心』じゃない?ってことになって。これももともと母がすごく好きな漫画。家に全巻あって家族みんなで読んでいました。私はアニメも同時に見ていたからすごくハマって、実写映画も見に行くくらい好きなんです」

 一番夢中になって読んでいたのは中学生の時。楽しかった学校生活の思い出と『るろうに剣心』は、重なる場面も多いという。

 「周りの友達にもすすめて、部活が終わった後にみんなで読みながら帰っていました。少年漫画だけど、剣心と薫の恋の行方も気になるし、女子でも楽しめるんです。私は、普段穏やかな剣心が抜刀斎モードになってキリッと冷徹になる、そのギャップがすごく好き。友達はちょっとけんかっ早い左之助が好きだったので、お互いにカッコよかったシーンを言い合って盛り上がったりして。『飛天御剣流!』とか言ってラケットで剣心の技を真似して、友達に本気で怒られたこともありましたね(笑)。

『るろうに剣心』2巻、P138より ©和月伸宏/集英社

 この作品は明治維新あたりのことが描かれているから、歴史の勉強にもなりました。授業は縄文時代から順番に進むんですけど、はやく明治時代にならないかなーって待ち遠しくて。私は『るろうに剣心』を読み込んで“予習”していたおかげで、出来事の流れや登場人物がよく理解できて、この時代だけは歴史の成績が良かったんですよ!」

 豊田さんが一番印象に残っているのは、薫の死が描かれたシーン。避けられない因縁のあった雪代縁(ゆきしろえにし)との戦いで、心の拠り所だった薫を失った剣心は、茫然と膝から崩れ落ちる。

 「剣心が泣きながら『また一番大切な人を守れなかった』って言うんです。それでいつも『薫殿』って言ってるのに、その時だけ『薫』って呼び捨てにしたんです。もう、胸が締め付けられました。でもそんな大事な場面だったのに、私うっかり手を滑らせてそのページを先に開いてしまって。え、薫死んじゃってるじゃん……って(笑)。その衝撃もあって、すごく印象に残っているんですよね」

 戦いのシーンでは、刀で斬り合って血が噴き出し、首や腕が容赦なく飛ぶ描写も多い。こういうシーンに抵抗はないか聞いてみると、「むしろ好きです」と豊田さんは笑顔で即答。

 「グロい系というんですかね? そういうのもけっこう好きで。だから血がいっぱい出たりする場面も平気です。少し前に『東京喰種』の実写映画を飛行機の中で見て、気持ち悪くなっちゃったんですけど(笑)、原作の漫画も気になりますね。なんとなく、大きな声で言いづらいですけどね、ふふふ」

 終始楽しそうに、漫画について話してくれる豊田さん。いまは、学生時代ほど漫画を読む時間はないけれど、「LINEマンガ」でちょこちょこ試し読みをして、時間ができたときに気に入った作品をレンタルショップで借りて楽しんでいるそう。バドミントンのことを考えない、完全オフの貴重なひと時だ。

 「漫画って、ほかのことを全部忘れてのめり込めるところがいいんですよね。読みたい漫画があると毎日がちょっと楽しくなるし。ささやかだけど、そういう時間を大切にすることが競技にも生かされると思っています。『るろうに剣心』の続編が単行本になるのも待ち遠しいし、実家の本棚に母セレクトの新しい漫画が入荷している頃なので(笑)、今度帰省するのも楽しみです」

>後編「メダルを獲って恩返ししたい」はこちらから