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コロンブス以降、世界に広まる

評者: 出口治明 / 朝⽇新聞掲載:2018年09月29日
トウモロコシの歴史 (「食」の図書館) 著者:マイケル・オーウェン・ジョーンズ 出版社:原書房 ジャンル:食・料理

ISBN: 9784562055579
発売⽇: 2018/07/20
サイズ: 20cm/180p

トウモロコシの歴史 [著]マイケル・オーウェン・ジョーンズ

 「食」の図書館シリーズは、どれも面白い。僕もそうだが、特に、食べることが何よりも好きな人にとってはたまらないだろう。本書は、世界三大穀物の首位を占める穀類の王様、トウモロコシの歴史をコンパクトにまとめたものである。
 コロンブス以前のメソアメリカの料理は、ミルパと呼ばれるトウモロコシ、豆、カボチャの混植あってのものだった。トウモロコシの歴史は9千年前に始まり、コロンブス以降、ポルトガル人とアラブ人が世界に広めた。どのような土地でも栽培しやすく生育期間が短く高収量なので広く歓迎された。今日、世界のトウモロコシの5分の2が米国で栽培され、3分の2は家畜の飼料となり、5分の1を人間が食している。トウモロコシの高さは60センチから6メートルまでさまざまだ。
 このシリーズが人気なのは、第1に、カラー写真が豊富なことではないか。本書もトウモロコシ料理の数々などを紹介している。見ているだけでおなかがすいてくる。飲み物もある。バーボン・ウイスキーを知らない人はいないだろう。次に、トリビアの泉である。トウモロコシに関わるネタが満載だ。男性用、女性用のコーンドレス、すべてトウモロコシでできているアパッチ族の像、コーンパレス、生産高トップのアイオワ州のコーン・ソングなど枚挙に暇がない。アイオワ大学は、3千本のトウモロコシでホームカミング・タワーを作ったそうである。
 真面目な論争もきちんと紹介されている。遺伝子組み換え作物については様々な意見があるが、事実を述べれば、2010年に米国で栽培されたトウモロコシの90%が遺伝子組み換え作物だったのである。
 日本は世界一のトウモロコシの輸入国である。トウモロコシは食料や飼料になるだけではない。生産高の1割は4千品目を数える工業製品に回されているのだ。私たちはもっともっとトウモロコシについて学ぶべきではないだろうか。
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 Michael Owen Jones 1942年生まれ。米カリフォルニア大ロサンゼルス校名誉教授。民俗学を中心に研究。