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料理観のギャップ否定せぬ懐の深さ

『めんつゆひとり飯』(1) [著]瀬戸口みづき

 面倒くさがりのOL・面堂露(めんどうつゆ)は、あらゆる料理をめんつゆで済ませる剛の者。一方、同期の社長秘書・十越(とごし)(旧姓本出〈ほんで〉)いりこは、出汁(だし)も鰹節(かつおぶし)を削るところから始める本格派。名は体を表す対照的な2人を中心に多様な食のシーンを描く4コマ連作集である。
 冷凍フライドポテトを使った肉じゃがを筆頭に、面堂さんの料理はとにかく適当。でもそれがやけにうまそうで、細かいことにこだわらない簡単レシピは実用的だ。手間暇(てまひま)かけずにいられない十越さんより、ある意味、面堂さんのほうが料理上手とも言える。
 面堂さんの料理に〈心の十越さん〉がいちいちツッコミを入れることで、一人暮らしの料理場面がにぎやかな会話劇に変身。脇キャラも含めてセリフ回しが秀逸で「十越さんは茶色いおかずに親でも殺されたの?」「女がオレを裏切っても肉と油は常にオレを幸せにしてくれる」など、名(迷?)言も飛び出す。
 それぞれの料理観のギャップは大きいが、お互いツッコミは入れても否定はしない。手間暇かけた料理もめんつゆ簡単料理もカップ麺もレトルトも、みんな違ってみんないい。そんな懐の深さはまさにめんつゆのよう。気楽に読めて意外と味のある一品だ。
=朝日新聞2018年10月6日掲載