豊臣秀吉の朝鮮出兵を巡り、東アジアで交錯する人物を描く歴史小説「天地に燦(さん)たり」(文芸春秋)で今年の松本清張賞を受賞し、作家デビューした。一度応募し落選したが、「モチーフやテーマに愛着があった」と大幅に改稿。2度目の挑戦で賞を射抜いた。「このままだと一生世に出ないと思って。そこから小説とは何たるかを勉強し直しました」
物語は三つの視点でつづられる。朝鮮に攻め入る島津の侍大将・大野久高、被差別民ながら儒学を修めたいと願う朝鮮の青年・明鍾(めいしょう)、中国・明と日本のあいだで板挟みになる琉球国の官人・真市(まいち)。通底するのは、礼を尽くさなければ人は禽獣(きんじゅう)と変わらない、と説く儒学の教えだ。
題材は歴史だが、「現代に生きる自分が思う課題や悩みを書きたかった。現代にいると見えないことを、ちょっと視点を離すことであぶり出すというか」。
大阪市に生まれ、現在は京都のカタログ通販会社で働きながら執筆を続ける。「書きたいテーマはたくさんある。自分が読んで120%楽しいと思えるものを妥協なく書ききって、世に出せるようになりたいです」(山崎聡)=朝日新聞2018年10月3日掲載
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