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新書ピックアップ(朝日新聞2018年10月20日掲載)

『本音化するヨーロッパ』 

 難民の大量流入をはじめ、内外の危機にさらされて、ヨーロッパはいま、多文化的な民主主義社会という理想が過去のものとなったかのような事態が生まれている。リトアニアでのNATOによる軍事演習、ドイツの難民受け入れ宿泊所の実態、台頭するドイツの右派ポピュリズム政党「AfD」の活動、苦境に立つアテネの医療現場などの取材を通して、一過性ではない地殻変動を読み解く。著者は読売新聞ベルリン特派員を経て、現在は同紙編集委員。
★三好範英著 幻冬舎新書・864円

『ルイ・アルチュセール』

 1960年代にサルトルを批判しマルクスを「構造」の概念から再解釈するなど哲学史に独自の地位を占める一方、80年に妻を殺し精神鑑定で免訴になった哲学者。しかし、死後30年近くを経た今も著作への注目は続いている。本書では、政治的なふるまいと思考をたどりながら、最も影響を受けたスピノザをめぐって読み直し、本人すら自覚していなかった哲学を作りだそうと試みる。
★市田良彦著 岩波新書・929円

『面倒くさい女たち』 

 なぜ職場で「女は面倒くさい」と思われやすいのか。具体的なエピソードを取り上げ、「社会の中の女性」という視点に基づき、「数の論理」と「ジェンダー・ステレオタイプ」に関する研究などから女性の特性を考察する。著者は健康社会学者。女らしさ・男らしさに縛られない、しなやかな人間関係づくりを提起する。
★河合薫著 中公新書ラクレ・907円

『試験に出る哲学』

 大学入試センター試験の「倫理」に出題された問題を入り口に、古代ギリシャから20世紀まで、西洋の哲学者の思想と哲学史の流れを紹介。試験問題は、プラトンの洞窟の比喩やマルクスの資本主義批判など、哲学者の核となる思想を簡潔に問うものばかりだ。巻末には、年代ごとの「入門書」中心のブックガイドも収録。
★斎藤哲也著 NHK出版新書・929円