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クリスマスや冬休みに、心あたたまる物語を

「おばあちゃんのわすれもの」

 こぶたのトンタはおばあちゃんとおでかけ。たくさんお店をまわって帰ろうとしたら、おばあちゃんの杖がない! トンタは大急ぎで探しに走ります。幼い足で一周できてしまうような世界にも、冒険と物語は満ちています。子どもの生き生きとした日常が描かれた温かい物語=小学校低学年から(丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん

「人形の家」

 トチーたち一家は人形の家で幸せに過ごしていました。ある日美しい人形のマーチペーンがやってきて、ささやかな暮らしが一変します。願うことしかできず与えられた場所でしか生きることのできない無力な人形たちは、私たち人間にも通じるところがあります。悲しい結末ですが、台詞(せりふ)の一つ一つが美しく心に刺さります=小学校高学年から丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん

「せん」

 まっしろな紙に鉛筆を走らせる。1本の線から物語が生まれる。絵を描く自由、わくわくするよろこびを、氷上をスケート靴ですべる女の子の気持ちに重ねて描く。ジャンプに挑戦したら……あっ! 失敗しても、大丈夫。もっと楽しい遊びがふくらんでいくから。絵本表現の可能性を追求する、韓国の作家の文字なし絵本=4、5歳から(絵本評論家・作家 広松由希子さん

「たいせつな わすれもの」

 役に立たない物への「これは、なんだ?」という驚き。捨てられたゴミたちの記憶。言葉にならない本当の美しさや悲しみ。そうした日頃忘れている大切なことを照らし出すのが、芸術の力だ。本書は美術家が子どもに向けてひらがなで綴(つづ)った展覧会の作品図録。でも、いろんな気づきを授けてくれる哲学絵本ともいえる=小中学生絵本評論家・作家 広松由希子さん

「決定版 長くつ下のピッピの本」

 作者自身が3冊の物語を1冊にまとめた決定版。オールカラーのさし絵は60年前に描かれたのに、斬新で魅力的だ。世界一強い女の子ピッピの自由な発想やハチャメチャな行動はお隣に住んでいるトミーやアニカだけではなく、世界中の子どもたちを楽しませてくれる。冬休みにじっくり読んでほしい=小学校中学年から(ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん

「神の道化師」

 クリスマスの季節になると読みたくなるこの絵本は、フランスに古くから伝わる民話をもとに書かれた。ジョバンニは何でも空中に投げ上げてお手玉のように回すことができた。やがて旅芸人の一行に加わりその芸をみがき、イタリア中に名前が知れわたるようになるが……。クリスマスイブに起こった奇跡に心が震える=小学校低学年から(ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん

「クリスマスのあかり~チェコのイブのできごと~」

 1年生のフランタは、ひとりでランプを持って教会に行き、あかりをもらって帰る途中、近所の貧しいおじいさんに会う。おじいさんが亡き妻のお墓に捧げようとした花束が盗まれたと知ったフランタは、なんとかしようと考えをめぐらせる。子どもの細やかな心の動きを伝える文章に、チェコ在住の画家のあたたかい絵がついている=小学校低学年から(翻訳家 さくまゆみこさん

「ふゆめがっしょうだん」

  冬の木の芽を、よく見てごらん。だれかの顔に似ているよ。笑っているみたいな顔もあるし、ちょっと怖い顔もあるけど、みんなで歌いながら春を待っているのかな? 自然ってゆかいで不思議。冬の散歩が楽しくなる写真絵本=幼児から翻訳家 さくまゆみこさん朝日新聞2018年11月24日掲載