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春名風花さん、平田オリザさん 対話と共感、違いを超えて

(右)はるな・ふうか 2001年生まれ。0歳から赤ちゃんモデルとして活動。単位制高校に通う。著書に『少女と傷とあっためミルク』など。
(左)ひらた・おりざ 1962年生まれ。劇団青年団主宰。「東京ノート」で岸田国士戯曲賞、「日本文学盛衰史」で鶴屋南北戯曲賞。『演劇入門』など著書多数。=伊ケ崎忍撮影

 『いじめているきみへ』(朝日新聞出版)を出版した俳優・声優の春名風花さん(17)と、『わかりあえないことから』(講談社現代新書)の著者で劇作家・演出家の平田オリザさん(56)が昨年12月、対談した。学校やネット空間でいじめはなぜ起きるのか、対話の可能性をどう開けばいいのか――。

いじめなくすために 演劇の可能性

 対談は朝日新聞東京本社・読者ホールで行われ、100人超の観客が詰めかけた。平田さんは観客約20人に、対話を体験してもらうワークショップを実施。「今行きたい国は?」といった質問に対して、答えが同じ人を探し、グループを作っていくという内容で、緊張していた参加者が打ち解けていった。春名さんも参加した。
 春名さんの著書は小学生の頃に応じた本紙インタビューを元にした。いじめている相手に愛する家族がいることなどを想像するよう切々と呼びかけている。「人には誰でもいじめをしたいという欲求があるので、それを思いとどまれるように本を作った。人間はつながりがあるから、あなたのいじめでつながりを含む全てを傷つける。すごい罪なんだと伝えたかった」
 平田さんは「素晴らしいのは、エンパシー(共感)を書いていること。同情とか同一化のシンパシーではなく、共感してもらう努力を積み重ねている」と称賛した。平田さんも自著で、医療や福祉、教育といった場でも共感が大切になっている、と主張している。
 いじめの背景には何があるのか。平田さんは「社会全体が経済優先で息苦しい」と指摘。「かつては学校で、原っぱで、家庭で、色んなキャラ(人格)を演じてバランスをとってたのに、一つのキャラしかやらないからキャラ疲れが出てくる」と語った。
 春名さんは「他人とずっと一緒にいないといけないのはストレス。だからキャラ変が起こった」と述べた。「キャラ変」は周囲に見せる人格を変えることで、春名さんは「あまりうまくいかない」とも述べた。平田さんも「(変えるのは)無理がある。キャラ増にした方がいいよね」と応じた。
 いじめをなくすにはどうしたらいいのか。ツイッターの投稿で炎上した経験がある春名さんは「殺害予告をされてつらかったんですが、いじめの理由は承認欲求なんだとわかった。仲間に認められたくてエスカレートしていく。いじめは麻薬みたいなもの。もっと楽しいことはあるはずで、それを知ってもらいたい」と語った。
 平田さんは「『いじめられた子の気持ちになって』と言うけど、いじめている意識が希薄なのが問題」と指摘。いじめと、いじりと、遊びがどう違うのか。いじめている側に相手側の受け止め方との違いを認識させる「コンテクスト(文脈)のすりあわせ」が重要と語った。演劇でも自分とはまったく違う役を演じる時、「自分と役との間で共有できる部分を見つけ、役に近づいていく」というすりあわせをする、と説明した。
 春名さんは学校改革の具体策として「担任制の廃止」「クラスをなくす」などを挙げ、演劇を授業に取り入れることも提案した。
 演劇教育に取り組んできた平田さんはコミュニケーションが近代化と共に、自然に身につくものから学ぶものに変わりつつあると指摘。「かつては村の祭りや儀式、芸能などにみんなが参加し、だんだん大人になったが、それが崩れていった。欧米では演劇教育に力を入れている。異なる価値観を持った人とのダイアローグ(対話)。それを演劇で学ぶんです」と語った。(星賀亨弘)=朝日新聞2019年1月26日掲載