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大胆な構図と陰影表現に舌を巻く 「北斎の肉筆」

『北斎の肉筆 HOKUSAI’s Brush スミソニアン協会フリーア美術館コレクション』から

 葛飾北斎といえば、まずは「冨嶽三十六景」。でもこれは版画で、版元らとの共同作業の結果だ。真の力量が分かるのが、肉筆画だろう。ワシントンのフリーア美術館蔵の北斎の肉筆画を紹介する本書は、同館が所蔵品の門外不出の方針をとるだけに貴重だ。
 例えば、表紙にも使われている「波濤(はとう)図」。北斎88歳の作だが、「冨嶽」の波に似ていながら、縦長画面にクローズアップにして収め、迫力と躍動感が倍加。大胆な構図と陰影表現に舌を巻くほかない。(大西若人)=朝日新聞2019年2月16日掲載