韓方医として患者さんと向きあって30年。体が冷えている人が増えてきたと実感しています。原因として考えられるのはストレス、運動不足、添加物の多い食べ物、東洋人と女性に多い陰性気質など。体に冷えが溜まる「冷え負債」は、基礎代謝率を低下させ、血液循環機能を弱めて、さまざまな疾患を招きます。特別な病名はないのに、頭痛、不眠症、めまい、便秘、むくみ、生理痛がある人。基礎体温が36.5度以下で、手足が冷たく、頻繁に風邪を引く人。こういった方は、下半身が冷えている場合がとても多いのです。長時間座る生活習慣も、下腹部に冷えを溜め込みます。気と血液循環の出発点となる「おしりのツボ」を、椅子に押しつけたままでいるからです。
そこで私は、体を温める一番大切な「おしりのツボ」を強化、活性化する「温活」を広めたいと思い、『おしり温活美人』という本を出しました。冷えを解消する「温活」には玄米カイロがお薦めです。本書で簡単な作り方を紹介している玄米カイロを、「おしりのツボ」に当てたまま10分座るだけ。すると体の芯がポカポカと温まってきます。これを一日最低3回続ければ、体中の気血を循環させるボイラーのスイッチが入り、冷え症が改善されます。本書では他にも、温活レシピや温活体操といった温活療法を紹介しています。下半身が温まって循環が良くなると、女性ホルモンのバランスも良くなります。そうすると不妊、更年期症状、不眠症、憂鬱症、むくみ、肌トラブルが改善され、体内の老廃物も排出されるので、ダイエット効果も期待できるのです。かくいう私自身も、体を温める習慣を毎日続けることで、体の外見と内面の健康を維持しています。
韓国の女性は幼い頃から、「冷たいところに座ってはいけない」「下腹を温かくしなさい」と言われて育ちます。古代から利用されてきた蓄熱式床暖房「オンドル」も、暖かい床でおしりを温めて体調を整える習慣が日常化したことと深い関係があります。韓医学は西洋医学と違い、痛い部位や悪い症状に執着するよりも、その痛みや症状をもたらした原因に着目して改善をはかります。森にある樹木1本1本を診るのではなく、森全体を診たうえで根本的な治療を行い、人体全体の調和を保つことを重視するのです。こうした韓医学の土台となっているのは未病の概念です。未病とは、体に異常を感じても検査では「問題なし」と診断されるような、疾病にまで発展していない不健康な状態のこと。この未病の段階で患者さんの不調を治療して、特定疾患に発展しないように管理していく点が、韓医学の大きな魅力なのです。
「おしりのツボ」を活性化する温活療法は、日本では聞き慣れない健康法ですから、最初は理解していただけるか心配でした。でも、おかげさまで本書は好評をいただき、実際に試してくださっている方も多く感動しています。興味を持ってくださった方は、まず玄米カイロを体験してみると、その効果を実感いただけると思います。