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変化、託された「令和」 米ハーバード大、ゴードン教授に聞く

アンドルー・ゴードン教授=京都市左京区、山本正樹撮影

 日本の新しい元号が「令和」に決まった。米国における日本研究の第一人者である米ハーバード大のアンドルー・ゴードン教授(日本近代史)にどのように受け止めたかを聞いた。

平成のイメージ・国のあり方…透ける首相の思い

 ボストンの自宅のテレビで日本の衛星放送にチャンネルを合わせ、菅義偉官房長官の発表を見ていた。「令和」という字を目の当たりにして、「令」が「命令」の字を用いていることに違和感を覚えた。だがすぐに、万葉集で使われている「令」には異なる意味があると知った。人々はすぐに慣れるだろう。
 私は新元号について、昨秋ごろから「変化(change)」を意味するものになると予想していた。
 振り返ると、平成はバブル崩壊やオウム真理教によるテロ事件、そして東日本大震災があった。明るい話題もあったが、多くの国民は平成に対して「暗い」イメージを持っているだろう。
 そのようなイメージを一新したいという思いを安倍晋三首相が持つのは、ある意味必然である。加えて安倍首相は憲法改正など、戦後の国のあり方を変えようとしている。だからこそ、新しい元号は「変化」を意味するものになると予想した。
 個人的には「変化」の「化」を使うと思ったから、令和は意外だった。だがそれはまさに、変化を意味している。「令」という字を史上初めて元号で使い、さらに史上初めて日本の国書を典拠にした元号だからだ。日本独自の文化の素晴らしさを再確認し、プライドを持って欲しいという思いがこもっているのだろう。安倍政権の支持基盤である保守派を喜ばせる内容でもある。
 令和になったからといって、日本が直面する課題が消滅するわけではない。少子高齢化や労働力不足は今後も深刻さを増すだろう。地球温暖化への対処は、日本を含めた世界全体の課題でもある。さらに、予測不能なトランプ大統領の米国との日米関係も懸念材料だ。令和時代のかじ取りが非常に難しいものであることに、変わりはないだろう。(聞き手・軽部理人)=朝日新聞2019年4月3日掲載