「プロっぽさ」「たくましさ」「潔さ」「厚かましさ」……。尺度がないモヤモヤとした31の事象に単位をつけて、イラストで解説していく本です。
お気に入りは「恥ずかしさ」の単位。麦茶の容(い)れ物を他人に見られた時の恥ずかしさを「1mc(ムギチャ)」と定義しています。まるで昔からあったかのようにつじつまを合わせて、単位を作ったことに思わず感動してしまいました。
私も麦茶の容器は他人に絶対見られたくない。理由はたくさんあります。ペットボトルの麦茶が安価で売っているのに手作り、そもそも冷蔵庫の中を見られるのは恥ずかしい、容器に茶渋がついている可能性――。「1mc」どころでは済まない気がします。
実家には、当時大好きだった氷室京介さんのポスターを何枚も貼っていました。それを友達に見られた時の恥ずかしさは「5mc」かな(笑)。自分だけでこっそり見られれば良かったのに。
15年以上前のテレビ番組のコーナーを本にしたものだから、単位の事例が懐かしい。土手で仲直りする「若々しさ」だったり、戸棚に隠したとっておきの一品を食べられた「憎たらしさ」だったり。「そんな時代があったの?」と驚きながら読んでほしい。
この本を手にしたきっかけは、五月女(そおとめ)ケイ子さんのイラストが気になったから。七三分けの男が必死の形相で単位の世界に興じているのが良い。
私は感性に任せて、何かを作り出す才能がないタイプです。だから、つじつまを合わせることを大切にしています。それができれば文章が書けるし、話題に事欠くこともない。話題が話題を呼んで仕事になり、実益を生む。この本はその境地だと思っています。(聞き手・宮田裕介 写真・横関一浩)=朝日新聞2019年4月17日掲載