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「写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議」書評 女性組合員らの熱気を今に伝える

評者: 斎藤美奈子 / 朝⽇新聞掲載:2019年05月04日
写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議 絹とクミアイ 著者:本田 一成 出版社:新評論 ジャンル:経営・ビジネス

ISBN: 9784794811189
発売⽇: 2019/02/18
サイズ: 21cm/203p

1954年に発生し106日間にわたって繰り広げられた日本最大級の労働争議「近江絹糸人権争議」。全国規模の総力戦の経緯を、労組幹部のOB、OGへのインタビューなどをもとに解…

写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議 絹とクミアイ [著]本田一成

 「全力集中」などのスローガンを掲げた構内の広場で休憩時間にくつろぐ女性労働者たち。一見平和なその工場が数カ月後には激しい闘争の場に変わった!
 1954年、大阪に本社を置く「近江絹糸」の彦根工場、富士宮工場などで多発的に起きた近江絹糸人権争議。本書はこの争議の一部始終を、200枚超の写真とともに追った貴重な労働運動の記録である。
 近江絹糸は非人道的な労務管理で有名で、労組が夏川嘉久次社長ら会社側に突きつけた要求にも「結婚の自由を認めよ」「仏教の強制をやめよ」「信書の開封をやめよ」といった人権にかかわる項目が含まれていた。書名は夏川社長をモデルにした三島由紀夫『絹と明察』に由来する。
 「団結」の鉢巻き。「夏川を倒せ?」などのプラカード。女性組合員らの真剣な表情が印象的だ。組合が機能していた65年前と働く人たちが分断された今日との差! この熱気を私たちはいつ失ったのだろう。