超大型連休も過ぎ去り、五月病になりやすい時期。というわけで、癒し度100%の図鑑「ねこのおもちゃ絵 国芳一門の猫絵図鑑」を紹介します。
「おもちゃ絵」とは子ども向けの浮世絵のことで、江戸時代の終わりごろから明治にかけて盛んに制作されました。カタログ的なものをはじめ、双六や漫画など、さまざまな種類のものが作られ、明治期にはおもちゃ絵は子どもたちの最先端メディアだったのだとか。遊びを通して、生活に必要な知識が学べる教材としての役目もあったといいます。
本書は、そんなおもちゃ絵の中から、擬人化された猫が登場する42枚を解説付きで収録。おもちゃ絵は遊んだら捨てるものだったため、残っているものは多くはないそうですが、浮世絵の猫ブームの影響もあり、猫が描かれたものだけでも100種類以上現存しているとのことです。
単にかわいいだけでなく、猫の姿を通して当時の庶民の生活が垣間見られるのもおもちゃ絵の楽しいところ。
例えば、湯屋も猫のおもちゃ絵の中で度々描かれており、江戸期のお風呂事情もここに凝縮されています。
一見、四階建ての建物のように見えますが、当時の建物は平屋か二階建てがほとんど。一つの建物を入り口、脱衣所・帳場、洗い場、座敷と、場面ごとに区切って構成しているのもおもちゃ絵の型式の一つなんだそうです。
洗い場には当時流行していたという打たせ湯も。湯屋の二階は座敷になっていて、猫たちがお寿司を注文しています。座敷はお風呂上がりにお茶を飲んだり、将棋や碁で遊んだりする社交場になっていたのだとか。お風呂をとことん楽しもうという気持ちは、今も昔も変わらないようです。
湯屋のほかにも町中や学校などを舞台に、茶目っ気たっぷりに描かれた猫たち。なんだかんだ人間社会をマイペースに生きる姿にきっと励まされるはずです。