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新書ピックアップ(朝日新聞2019年5月18日掲載)

『食の実験場アメリカ』 

 建国当初、移民たちは土地の作物を先住民から学び、母国の食習慣と合わせて独創的な食物を創造した。その記憶は画一化されたファストフードにも残る。女性の禁酒運動に始まる健康や安全の追求は、社会変革を志す現在の新しい農業モデルにもつながる。食から見つめたアメリカ史。
★鈴木透著 中公新書・950円

『感情の正体』

 時に自分でも手に負えなくなる「感情」。それはどのように喚起されるのか。成長とともにどのように発達していくものなのか。発達心理学を専門とする著者が、最新の研究からその正体に迫り、非行・いじめ・発達障害などへの対応や、感情に操られないためのスキルを示す。
★渡辺弥生著 ちくま新書・929円

『宅地崩壊』

 地震や集中豪雨にともなう地滑りや液状化による宅地の被災が増えている。これらは自然災害であると同時に、戦後の宅地開発が抱えていた問題点が噴出した「遅れてきた公害」でもある、と斜面災害研究センター長の著者は指摘。「わが家」のリスクを知るためにも地学的教養が必要という。
★釜井俊孝著 NHK出版新書・972円

『資本主義と民主主義の終焉(しゅうえん)』 

 平成の初期は、バブル崩壊で、従来の経済成長の条件が失われた時期と重なる。しかしそれまでの成長志向と米国依存からの転換は果たせず、権力は集中し、リスクは個人化した。日本の31年間を経済学者の水野氏と政治学者の山口氏が読み解き、日本再生の課題を示す。
★水野和夫・山口二郎著 祥伝社新書・907円

『善く死ぬための身体論』

 思想家で武道家の内田氏とヨーガ行者の成瀬氏が、良き死を迎えるための充実した人生のあり方について語り合う。生命力を高める呼吸法や瞑想(めいそう)法、エネルギッシュに生きる上で必要な心得などを具体的に紹介。話題は宗教論や文明論から「超能力」へと縦横無尽に広がる。
★内田樹・成瀬雅春著 集英社新書・929円