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「人喰い」書評 大富豪の息子の失踪事件の真相は

評者: 長谷川眞理子 / 朝⽇新聞掲載:2019年06月01日
人喰い ロックフェラー失踪事件 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ) 著者:古屋美登里 出版社:亜紀書房 ジャンル:ノンフィクション・ルポルタージュ

ISBN: 9784750515731
発売⽇: 2019/03/21
サイズ: 20cm/431p

なぜマイケルは殺され、食べられなければならなかったのか。1961年、首狩り族の棲む熱帯の地で財閥の御曹司が消息を絶った。全米を揺るがした「ロックフェラー失踪事件」の真相に…

人喰い ロックフェラー失踪事件 [著]カール・ホフマン

 1961年11月、当時の世界一の大富豪ネルソン・ロックフェラーの息子、マイケルがニューギニアで失踪した。熱心な捜索が行われたが、真相は解明されなかった。当地はアスマットという人たちの土地で、彼らは敵対する人々と戦い、復讐の殺戮を行い、首狩りをして犠牲者の肉を食べる風習を持つ人々だった。実は、マイケルはそこで起こった過去の争いの報復として殺され、彼らに食べられたのだ。当時の記録は存在するが、オランダがここをうまく統治していると国際舞台で主張し続けるために事実は抹殺された。
 著者は若いころから「未開」にあこがれていたジャーナリストで、この事件の真相解明を志す。その過程で、彼はまさに文化人類学者が現地調査をするように、彼らの文化に溶け込まねばならなかった。本書は、事件の解明とともに、彼自身が異文化理解に開眼する、感慨深く貴重なドキュメンタリーである。