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映画「ホットギミック」出演の乃木坂46堀未央奈さん&山戸結希監督 自分を探す旅のまっただ中にいる女の子たちへ

文:永井美帆、写真:篠塚ようこ

――おふたりの最初の出会いは、山戸監督が乃木坂46「ハルジオンが咲く頃」(2016年)のミュージックビデオを手がけた時ですよね。その時のことを覚えていますか?

山戸:もちろん、心に突き刺さるくらい強く残っています。アイドルという流れが速い世界の中にいながら、堀さんは自分の足でしっかりと立ち、何というか……1人で世界と向き合っている感じがしたんです。その姿がみずみずしくて、誠実さが伝わってきて。それを直接言葉にすることはなく、当時はそのまま持ち帰ったんですけど、この映画を撮ろうと決めて、「ヒロインは誰にしよう」と考えた時、真っ先にその時の堀さんの姿が思い浮かびました。

堀:すごくうれしいです。当時を振り返ると、まだアイドルとしての覚悟が持てていない時期で。なかなか「アイドルとして生きていく」って振り切れずにいたんですけど、一方で「こうなりたい」とか「こんな風に見てもらいたい」という思いは強く持っていました。でも、そういう気持ちが周りの人にどう届いているのかって自分じゃ分からないじゃないですか。山戸監督にそう言ってもらえて、その時の頑張っていた自分が報われた気がします。

――堀さんは今作が映画初出演ですが、撮影に入る前、おふたりでじっくり話す機会があったと聞きました。どんなお話をしたんですか?

山戸:ミュージックビデオの撮影で会ったのが最後だったので、ちゃんとお会いして、自分の言葉で伝える必要があるなって思ったんです。まだオファーの段階で、正式には出演が決まっていなかったんですけど、この映画をどんな人に届けたくて、堀さんにはどんなものを求めているかっていうのを一生懸命お話ししました。そこで、2人で「よし、がんばろう!」と盛り上がりましたよね。

堀:山戸監督と話していると、自分と似ている部分を感じるんです。私は乃木坂というグループにいて、「アイドルとして見られている自分」みたいなものと日々戦っているようなところがあって。監督はたくさんのスタッフさん、役者さんと一緒に映画を作っていて、それを見てくれる人がいて。そういう状況で監督も戦っているように見えて、同じ戦う者同士というか、そんな監督と一緒に作品を作れたら良いなって思いました。

――映画の原作漫画『ホットギミック』はどんな風に読みましたか?

山戸:少女漫画って、「女の子の求めているもの」が詰まっていると思うんです。「ホットギミック」は、その一つの流れを作った作品という意味で素晴らしいと思ったし、源流としての強さを感じました。女の子が好きな男の子にドキドキして、その人のことを求めてしまう力は全然汚いことでも、いやらしいことでもない。そういう女の子の気持ちがすごく切なく、美しいものとして描かれていて、その要素を映画の中にもちりばめられたら、きっとすごい作品になるんじゃないかって感じました。

©相原実貴・小学館/2019「ホットギミック」製作委員会
©相原実貴・小学館/2019「ホットギミック」製作委員会

堀:初ちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきました。自分のことを好きになれない感じとか、「これ!」って決められない弱さとか迷い。そういうのは、恋愛に限らず、色々なところにあると思うんです。私は乃木坂のメンバーで、同世代の子たちより恋愛経験が少ないのは仕方ないことなんですけど、初ちゃんの気持ちにすごく共感したし、22歳の私が17歳の初ちゃんを演じるのにあまりギャップを感じませんでした。撮影中は「演じているようで、演じていない」みたいな状況がずっと続いていましたね。

山戸:約1カ月の撮影中、現場にいる時の堀さんは初そのもので、自然に「初ちゃん!」と呼びかけるようになりました。

――それほど役に入り込んでいたんですね。堀さんにとって初めての映画の現場はどうでしたか?

堀:毎日が不安だらけで、撮影前も撮影中も、映画が完成して公開を控える今も不安です。でも、不安を上回るくらいに演技が出来た楽しさとか、やりたかったことを見つけた喜びの方が大きいんです。私にとってはメンバー以外の役者さんとかスタッフさんと一緒に作品を作っていくことも初めての経験で、撮影期間は映画に関するもの以外はほとんどシャットアウトして、ずっとスイッチオンの状態で気持ちを作っていました。

山戸:シーンごとに、「この場面の初の気持ちはこうかなあ」って言葉にして堀さんとコミュニケーションをとっていましたね。堀さんは私の言葉をすぐに理解して、1回1回のお芝居でどんどん花開いてゆくんです。お互いに空気感がつかみやすく、フィーリングも合うので、言語化しながら作品を作ってゆくことの楽しさを改めて感じた現場でした。

堀:山戸監督とは、例えば100色の色鉛筆があって「1本選んで下さい」って言われたら、同じタイミングで同じ色を選ぶんじゃないかっていうくらい。撮影中も、「このシーンはこうですよね!」ってリンクすることも多かったです。

――そうやって完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?

堀:撮影中はほとんどモニターチェックをしなかったので、こんな風に撮ってもらって、そこに音楽がついて、映画の世界が出来上がっていて。その中で自分が生きているっていうのが不思議な感じがしたし、すごく幸せな気持ちになりました。

山戸:何十回と見た今でも、堀さんが演じる初の声や存在に心を動かされることがあるんです。10代の頃って自分が何者か分からなくて、傷つきながらも、それをずっと探し求めていたような気がします。今、その旅のまっただ中にいる女の子たちに届いて欲しいと切望しています。

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