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表紙から巻末までゾクゾク ラサール石井さんが好きな本「透明怪人」

ラサール石井さん

 小学生のころ、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに夢中になりました。『透明怪人』はその1冊。出身は大阪ですが、近所の貸本屋にシリーズが並んでいたんですよ。『黄金豹(ひょう)』『魔法人形』などの題も奇抜。当時の本は今と違っておどろおどろしく、表紙の絵と巻末のキャッチコピーが怖かった。シリーズをほぼ読破しました。
 『透明怪人』は記憶をたどると、「ああ、大友君の手が足が消えていくではありませんか」といった巻末のうたい文句が最も恐ろしく、すぐに借りられませんでしたね。透明人間になるトリックもすごいし、伏線の張り方や解き明かし方も実に見事。乱歩は子どもたちを怖がらせる天才です。
 少年探偵団の団長の小林少年は美少年、名探偵明智小五郎は髪をかきむしっているけれど、眉目(びもく)秀麗。乱歩らしいですね。シリーズに出てくるお屋敷や昭和の古い雰囲気も味わい深い。
 当時はテレビでも放映していて人気でした。購読していた月刊誌には、付録に探偵団の少年たちがつける「BDバッジ」のほか、探偵手帳などの七つ道具がついていて楽しみでした。子どもたちを集めて、ぼくが「演出家」をやり、少年探偵団ごっこをして遊んでいました。今、お芝居でやるなら?
 うーん。俳優の沢村一樹(いっき)さんなんか明智君のイメージに合う気がします。
 その後、ホームズや怪盗ルパンにも夢中になり、江戸川乱歩のペンネームの由来になった米国の作家エドガー・アラン・ポーも読みました。少年探偵団シリーズは今の子どもたちにも読んでほしいですね。旧仮名遣いの昔の本を探してきて、当時のゾクゾクする雰囲気を味わってほしいです。(聞き手・写真 山根由起子)=朝日新聞2019年6月19日掲載