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「喪失学」など注目の新書5選(朝日新聞2019年8月17日掲載)

『戦争の記憶』 

 2017~18年に米・コロンビア大であった特別講義を収録。歴史学教授の著者と、米国、カナダ、日本、韓国、中国など背景の異なる学生が「パールハーバー」「慰安婦」「原爆」など第2次世界大戦の歴史と記憶について対話する。「ニューズウィーク日本版」全4回の特集を書籍化。
★キャロル・グラック著 講談社現代新書・907円

『喪失学』

 災害や事故で奪われた「大切な存在」への喪失感と不条理な思い、誰もが経験する死にどう向き合って生きてゆけるのか。グリーフケアに関わる著者は、喪失体験の影響に焦点をあてながら、経験からの成長と、生きる力を取り戻す方法を探る。巻末には「喪失体験に関する10の問い」もある。
★坂口幸弘著 光文社新書・842円

『新宿二丁目』

 東西300メートル、南北350メートルほどの区画内に、LGBT関連の店が400軒ほどひしめく東京の新宿二丁目。1960年代後半ごろにゲイバー街として成立したこの地の歴史を、ゲイバーの経営者であり、作家の著者が関係者への取材と文献にあたってつづる。文字通り「多様性」が街に息づいている。
★伏見憲明著 新潮新書・886円

『科学技術の現代史』

 2010年代にはAI(人工知能)やバイオテクノロジーが進展する一方で、新たなリスクや倫理的問題も発生するなど、科学技術も大きく変化。国家主導で科学技術開発が進められた第2次世界大戦中から未来への展望まで、米国に焦点をあてて、国家との関係から科学技術を洞察する。
★佐藤靖著 中公新書・886円

『ハンナ・アーレント』

 既存の思考に依存しない「手摺(てすり)なき思考」で知られる政治思想家ハンナ・アーレントを、『全体主義の起原』『人間の条件』など7冊の著作を中心に紹介。ユダヤ人としての出自や亡命、ヤスパースやハイデガーらとの関係、アイヒマン裁判を扱った著作などから思索に迫る。
★森分大輔著 ちくま新書・950円