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映画「潤一」に出演、日韓で活躍の女優・藤井美菜さん 妙な説得力ある「現代版の源氏物語」

文:永井美帆、写真:篠塚ようこ

――藤井さんは読書好きだと聞きましたが、原作小説はどのように読みましたか?

 まず台本を読んで、その後に原作を読み始めました。現代版「源氏物語」みたいな刺激的な内容ですよね。でも、現実離れしているわけではなく、妙な説得力があるんです。映画では6人になっているけど、原作には9人の女性たちが描かれていて、妊婦だったり、不倫中だったり、全員が非日常のような状況にいます。確かにモラルに反するところはあるんですが、きっとそんなタイミングで潤一みたいな男性が現れたら、ふらっと行ってしまうのかもしれないですね。私自身は独身だし、妊娠した経験もありませんが、映子の気持ちが何となく理解できました。普段は、よしもとばななさんとか、日常を描いたような作品を読むことが多いので、『潤一』を読んで、新しい世界に出会ったような気持ちです。

――藤井さんは、出産を間近に控えた妊婦の映子を演じました。妊婦の役はいかがでしたか?

 自分が経験していないことを演じるので当然大変なんですが、映子の場合、妊娠して、おなかが大きくなっているという事実を受け入れられていないように感じました。もともと運動神経が良くて、太極拳の講師として活躍していた自分が、「大丈夫?」って周りから心配される存在になったことに戸惑っているというか。だから、「あえて妊婦らしくしない方が良いんじゃないか」と考え、監督とも話しながら役を作っていきました。

――そうした役作りの中で、原作を読み返すことはありましたか?

 映子は「うれしい」とか「悲しい」とか、分かりやすい感情がないような役だったので、撮影前に原作をじっくり読んだことが役作りの助けになりました。潤一と9人の女性の物語を通して読んだことで、潤一の人物像や作品の世界観をより深く理解できたように思います。

©2019「潤一」製作委員会

――現在、日本と韓国で女優として活動していますが、ドラマや映画の制作現場に何か違いはありますか?

 カルチャーショックの連続です(笑)。ちょうど今(取材は6月中旬)、韓国で連続ドラマの撮影をしています。韓国のドラマはこれが3回目ですが、最近は日本でお仕事が続いていたので、日韓の現場の違いをかみしめているところです。日本だとまず台本ありきで、その中でいかに自分らしさを出していくかっていう感覚があったんですけど、韓国ではせりふや動きごと変えてしまいます。だから、私も瞬発力が試されているような感じです。

 台本を読んで想像していた動きと違ったものが来た時、その場その場で判断して、考えられる選択肢の中で一番良い演技で応えなきゃいけない。これが韓国の現場なんだって実感しています。でも、これって日本の現場でもやってもいいことですよね。自分の役を最大限いかして、面白い作品を作るために、せりふや動きをアレンジしても良いんだって。韓国での活動を日本で、日本での活動を韓国で、それぞれどうやっていかしていくかが今後の課題です。

――韓国で活動を始めて、今年で8年になります。韓国語で演じることには慣れてきましたか?

 台本を読んでせりふを覚えるのは、まだまだ時間がかかります。言葉の壁っていうのは、海外で活動する上で必ずついてくるものなので、歯を食いしばって頑張っています。もともと韓国語の勉強を始めたのは、韓国ドラマがきっかけです。高校生の頃に家族全員で「冬のソナタ」にはまって、大学に入学して第2外国語を決める時、「韓国語を勉強すれば、ドラマのせりふが分かるようになるかも」って気軽な気持ちで選びました。実際勉強してみると、日本語と韓国語は文法が似ていたり、単語の発音が近かったりして、どんどん楽しくなってきて、授業以外でも語学学校に通って3年くらい勉強しました。

 ちょっとだけ話せるようになった時に、テレビ東京の日韓合作ドラマで「韓国語を話せる日本人の役を探している」ということでオーディションを受けて出演したことがきっかけで、韓国でも活動するようになりました。もともと韓国ドラマが好きで韓国語を始めて、今では自分が韓国ドラマに出演しているなんて不思議な気持ちです。

――韓国で活動するのは勇気も必要でしたよね?

 もともと私は保守的で頭でっかちなところがあったんです。だからこそ海外に出て、日本と違うシステムに身を置いてみて、いろんな刺激を受けることが自分の視野を広げたり、柔軟性を育てたりする上ではすごく良い機会になっているなって思います。ただ、今でも泣きたくなるくらい大変です。どんなに頑張っても言葉はネイティブの人には追いつかないし、女優というお仕事は言葉抜きにしては出来ないものだから。でも、韓国で活動を始めて8年、コツコツと積み重ねてきたものがあるから、前よりは気持ちが楽になったように思います。

 韓国滞在中は映画やバラエティーなど、意識的に韓国の作品を見て、今何がはやっているのかを吸収するようにしています。逆に日本に帰って来た時は日本の作品を見ているので、2倍の時間がかかりますが、それが私のキャリアの個性になるのだと思っています。日韓両国で活動しているからこそ、お互いの国の良いところがハッキリと見えてきたし、それぞれの国には本当に良い作品、良いコンテンツがあるので、これからもボーダーレスに活動していけたら良いなって思いますね。

――そんな忙しい毎日の中で読書は続けていますか?

 子どもの頃の方が幅広い作品を読んでいたなって思います。今も休みの日には、よしもとばななさんとか瀬尾まいこさんとか、女性の作家さんの作品を読んでいますね。黒柳徹子さんの本が大好きで、『トットチャンネル』とか『トットの欠落帖』とか、本当に感性が豊かな方なんですよね。女優の大先輩としても「こういう見方があるんだ」って新しい発見の連続だし、失敗したことなんかも黒柳さん独自の視点から、楽しく書かれていているので、前向きなパワーをもらいます。韓国語の本にも挑戦してみたいんですけど、今はまだ台本で精いっぱい。もう少し読むスピードが上がったら、トライしてみようかなと思っています。