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「世界の民族衣装図鑑」 民族衣装は情報の宝庫

 近年、中国の若者の間で漢民族の伝統的な民族服「漢服」を着ることがブームとなっています。中国の人口の9割以上を占めるのは漢民族。世界的にも中国の存在感が大きくなる中で、漢服ブームの背景には自国の伝統文化復興への動きや民族意識の高まりがあるようです。中国の民族衣装というと、パッと思い浮かぶのはチャイナドレスですが、こちらは清朝を統治した満州族の民族衣装なんだそう。

 知っているようで意外と知らない民族衣装のこと。そこで今回注目したいのが「世界の民族衣装図鑑」です。本書は、東京・新宿にある文化学園服飾博物館のコレクションの中から69カ国の民族衣装をピックアップし、およそ500点に及ぶ写真とともに紹介しています。

 いろんな民族衣装を見ているだけでも楽しいですが、民族衣装にはさまざまな情報が含まれているのも面白いところです。
 たとえば、当然のごとく、民族衣装の形態に関わってくるのが土地の気候。アラブ地方などでよく見られる全身を布で覆うような民族衣装は、一見暑そうに見えるものの、日差しを遮り、体内の水分が蒸発しすぎるのを防ぐためなんだとか。砂漠地帯など、暑さだけでなく乾燥の厳しい地域であることがうかがえます。
 気候の他にも、民族衣装には暮らしの習慣や民族の歴史、身分や思想などが反映されているとのこと。民族衣装から読み取れる情報は想像以上にたくさんあるようです。

 来たる10月22日の「即位礼正殿の儀」では、天皇・皇后両陛下の古式装束姿を見ることができます。装束そのものに宿る日本の伝統美を愛でるのはもちろんのこと、天皇陛下だけが着用を許される「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」や皇后さまが新調される「十二単」、それぞれの装束に込められた意味や由来を調べてみるのも一興です。