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「SLAM DUNK」流川の黙々と目標に向かって突き進む姿が好き 柔道・原沢久喜さん(前編)

文:渡部麻衣子、写真:斉藤順子

>原沢選手が柔道の競技生活について語る後編はコチラ

中学校の図書室で読んで、鳥肌が立った山王戦

――『SLAM DUNK』を手にとったきっかけを教えてください。

 中学校の図書室にあったんですよね、なぜか。読んでみたらめちゃくちゃおもしろくて、一気に引き込まれました。特に印象に残っているのは山王戦。一分一秒の緊迫感、プレーの描き方が凄まじくて、読んでいて鳥肌が立った。漫画でそういう感覚を味わったのは初めてのことでした。

――原沢さんは6歳から柔道一筋ですが、作品に影響されてバスケをやってみたくはなりませんでしたか?

 高2のとき、ちょうど高1夏の花道と同じ身長になったんですよ。189.2cm。そのころは僕も痩せていて81キロくらいだったので、遊びでよくダンクをやっていました。今は120キロあるのでできませんけど。

――では、作品の中で一番思い入れのあるキャラクターは主人公の桜木花道でしょうか。

 流川です。流川の黙々と一人でやる感じが好きなんです。自分の目標に向かって突っ走っていくところも尊敬できるし。僕も黙々と取り組むタイプだから、花道より流川が好きなのかもしれません。

――山王戦では、これまで何度もチームの危機を救ってきた天才ルーキー・流川ですら山王工業高校のエース・沢北には遠く及ばないのか、と突きつけられるシーンがあります。でもそこから流川が覚醒して卓越したプレーを繰り出すという怒涛の展開でした。

 山王戦の途中で流川の回想として入ってくる仙道との1on1のエピソードもすごく好きなんです。流川に「全国には……おめーより上がいるのか?」って聞かれた仙道が、「北沢」と答えるんだけど、実際は北沢じゃなくて沢北で、流川が「沢北じゃねーか……どあほう!!」って頭の中でツッコミをいれる、あのシーン。スポーツマンガなのにほどよく笑いの要素も入っているところも『SLAM DUNK』の魅力。去年発売された新装版も買いましたが、何度読んでもおもしろいです。

――10代と20代で、読後感に変化はありましたか?

 昔は単純に流川のプレーのかっこよさに目がいきがちでしたが、赤木が山王戦後半で涙を流す場面にも感情移入できるようになりました。

――“無名の湘北”のキャプテン・赤木は、“最強・山王”を倒して全国制覇することを目標に練習に励み、ついに3年で最高のチームメイトに恵まれて夢の舞台に立ったんですよね。

 自分もずっと、「必ず結果は出る」と信じて柔道をやってきたから、赤木の気持ちがわかる気がして。『SLAM DUNK』は、登場人物たちそれぞれのこれまでの道のりがリアルに感じられる作品です。

たとえるなら“海南の王子谷、湘北の原沢” 名前にビビッて負け続けた高校時代

――『SLAM DUNK』では主人公が高校で才能を開花させる姿が描かれていますが、原沢さんが大きな成長を遂げたのは日本大学に進学してからのことでした。

 僕が通っていた高校は柔道部員が5人しかいないような学校で、たまたま試合会場で僕を見かけた金野(潤)監督が声をかけてくださった縁で、日大に行くことになりました。

――どんなところを見込まれてのスカウトだったのでしょうか。

 高校のころ、身長は今と同じくらいありましたが、体重はまだ100キロ程度で細かった。でも監督は、「柔道の技術は荒削りな部分が多くて素人みたいだけど大学で、もっとレベルの高い練習をさせて、技術を身につけさせれば伸びるんじゃないか」と思ったそうです。
 柔道の世界にも、高校で一気に才能を開花させる素人・桜木のような天才や、中学時代から既に全国的に名の知れていた流川や仙道のような天才がたくさんいました。

――原沢さんもその一人ですか?

 違います。むしろ天才は同級生の王子谷(剛志)選手。王子谷選手は環境もエリートなんです。東海大相模(高校)の王子谷といったら、名前を聞いただけでビビる存在。『SLAM DUNK』でたとえるなら、海南の王子谷、湘北の原沢みたいなイメージです。高校時代は一度も勝てず、やっと勝てたのは大学3年生のとき。大学で揉まれて努力を積み重ねて積み重ねて、心から勝ちたいと思ったときに勝てたので、すごく嬉しかった。結果が出たことでさらに柔道に対する意識も高まりました。

――今もライバルとしてオリンピック代表の座を争う王子谷選手と、アドバイスし合うことはありますか? 原沢さんは、山王戦の好きなシーンとして仙道が流川にアドバイスをする場面を挙げていましたが……。

 しないしない(笑)。仲が悪いわけではないですがやっぱり意識はしているので、バスケのチームメイトだとしてもお互いパスは出さないですね、きっと。

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