東京とシドニーを舞台に、人から人にやさしさをつなぐ12編の連作短編集です。
第1話は、東京の桜並木のはずれにあるカフェで働く「僕」の物語。ひそかに恋心を抱く常連客の「ココアさん」への、細やかで温かい思いやりが綴(つづ)られます。第2話の主人公は、カフェに居合わせたキャリアウーマン。幼稚園に通う息子のために初めてつくる料理にほろりとするお話です。第3話は、幼稚園の先生とその先輩の口下手な関係。――そうやって登場人物が重なり、最後はココアさんの意外な独白で結びとなります。
誰もが他の誰かの人生に関わっていて、生きているだけで人を幸せにしているかもしれない。そう感じることができて、心に灯がともるような読後感です。
定価640円+税 宝島社 03・3234・4621