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西炯子「恋と国会」 ふたりの新人議員と「永田町の常識」

 数々の疑惑も大事な法案も置き去りに臨時国会は閉会した。国会議員とは何のために存在するのか。具体的にどんな仕事をしているのか。議席で寝てる人は何なのか。そんな謎だらけの“国会議員というお仕事”を正面から描く。

 代々総理を輩出している名家の三代目・海藤福太郎と素性の知れぬ元地下アイドル・山田一斗(いっと)。出自も考え方も正反対の新人議員2人の目を通して、国会と国会議員の実態を読者は見ることになる。

 いわゆる「永田町の常識」に則(のっと)りソツなく振る舞う福太郎に対し、素朴な疑問を抱いては一切の忖度(そんたく)なく発言行動する一斗の突破力が痛快。首班指名に自分の名前を書き、所信表明演説の拍手指示には「小学校みたーい!」とツッコミを入れる。ありえないと思う向きもあろうが、冷静に考えれば一斗の感覚のほうがよほど真っ当ではないか。

 「国会とは、我々与党が出した法案を、次々通していくところだ」なんて身もフタもないセリフも飛び出す。一方で世襲議員ゆえの苦悩、選挙区での地道な活動の描写も。何やら秘密がありそうな一斗の過去も気にかかる。華やかにして緻密(ちみつ)な作画も魅力。現実の国会にも一斗のような突破者が出てきてほしい。=朝日新聞2019年12月21日掲載