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お母さんだっていろいろです  「3人のママと3つのおべんとう」など「子どもの本棚」オススメ3冊

「3人のママと3つのおべんとう」

 理想のお母さん像を勝手に作って、うちのお母さんはちっともそれらしくないな、と思ってる人はいませんか? でもね、お母さんだっていろいろなんです。韓国からやってきたこの絵本に描かれている3人のママは、仕事も性格も家庭環境もまったく違います。子どものお弁当の支度だってそれぞれ。あわてて買いに走るママだっています。それでも、3人とも忙しい毎日のなかで子どものことを気にかけています。だから、お弁当をもって野原に遠足に出かけた子どもたちは、それぞれのママに、それぞれの方法で春の息吹をとどけてあげるのですね。読者の心の中にも春の景色が広がります。それにしても、パパの存在が見えないのは、日本と同じということでしょうか?(クク・チスン作、斎藤真理子訳、ブロンズ新社、税抜き1400円、5歳から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「朔(さく)と新(あき)」

 高速バスの事故で視力を失った朔と、そのことに責任を感じ走ることをやめた弟の新。兄弟の関係がうまくいかないまま事故から1年が経ち、盲学校の寮で暮らしていた朔が家に帰ってきた。家族が気づかう中、朔の新しい生活は始まり、ある日ブラインドマラソンに挑戦したいと言い出す。伴走者にと頼まれた新は、素直な気持ちで朔と向き合えないまま承諾するが……。1本のひもをお互いに持ち二人三脚のように共に走ることで兄弟の絆を取り戻すことができるのか。2人にエールを送りたくなる。(いとうみく著、講談社、税抜き1500円、中学生から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「コトノハ町はきょうもヘンテコ」

 レンちゃんの住むコトノハ町は何とも不思議。道草を食べる町の人、食べてすぐ寝て牛になる男の人、おしゃべりに夢中なおばさま方のまわりはいつだって花ざかり。そう、この町ではことわざや慣用句などがその言葉通りになってしまうのです。いつも何げなく使っている言葉。コトノハ町ではどうなってしまうのか、想像してみるのも楽しいですね。みんなでコトノハ町へレッツ・ゴー! 日本語のふくよかさが楽しめる、インテリジェンスなエンタメ作品です。(昼田弥子作、早川世詩男絵、光村図書、税抜き1000円、小学校中学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

教科書にはない宝、本で探して 新1年生のみなさんへ 小学校図書室の元先生より

 もうすぐ新入学の季節。小学校の図書室には、家には入りきらないくらいたくさんの本が並んでいます。小学校の図書室の先生として30年以上働き、今は川崎市の自宅で「いぬくら子ども文庫」を開く渡部康夫さん(69)に、新1年生に伝えたいことを聞きました。

 渡部さんの家に入ると、玄関から居間まで絵本や物語の本、紙芝居などがずらり。1万冊以上あり、毎週水曜日に地域の子どもたちに貸し出している。

 渡部さんは9年前まで小学校の先生をしていた。でも、渡部さんは「教科書だけを信用しちゃいけない」。図書室に行けば、教科書には載っていない知識や、喜怒哀楽を描いた物語が本の中に詰まっている。「あっちこっち寄り道をするように本を手にとって、一つの物事にも色々な考え方ができることを知ってほしい」という。

 興味のなかったテーマでも、読み始めてみたら面白くなってのめり込んだ子もいる。

 漫才やコントの作り方が書かれた本を読んだ子は、同じ本を読んで仲良くなった友だちとお笑いコンビを組んで文庫でお笑いライブを開催。一時期学校に行けなくなってしまった子が、本で手話のことを調べてノートにまとめ、先生にほめられたことが自信になってまた通えるようになったこともあった。

 渡部さんは「背表紙を見て、何が書かれているのか想像するだけでもいい。宝探しをするように、自由に本との出会いを楽しんでほしい」と話した。(伊藤舞虹)=朝日新聞2020年3月28日掲載