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BLラバーの書店員の心を震わせた「このセリフがすごい!BL」

作中作のセリフがリアルに突き刺さる瞬間に鳥肌!!(井上將利)

 キャラクターの放つ言葉はとても大事な作品の構成要素。今回、初めてセリフに着目したテーマということで選んだのは、じゃのめさんの「黄昏アウトフォーカス」(講談社)

 学生寮で暮らす高校生、土屋真央と大友寿は同室になって2年目の春を迎えた。そんな2人には3つの約束がある。

 ①真央は寿がゲイで彼氏がいることを口外しない
 ②寿は真央を恋愛対象とせず、手出ししない
 ③互いのオナニーは邪魔しない

 1年前、寿と同室になった真央は、無愛想な寿に対し距離を作って過ごしていた。しかしある日、風邪で朦朧とする寿が真央を襲いかけたことで、寿は自分がゲイであることを告白。そんな寿を受け入れた真央は、これから友人として過ごすために3つの約束をし、2人の共同生活が始まったのだった。

 映画部に所属する真央は、同じく部員の市川らと共に新たな映画製作を始める。ピュアな高校生たちが青春を捧げて作る今回の作品はなんとBL。真央は撮影班のリーダー、そして才能あふれる監督・市川が主人公に指名したのは寿だった……。寿がゲイであることを知る真央は心中穏やかでなく、彼を傷つけるのではと後ろ向きな感情を抱いていた。しかし同時に、自分のイメージに怖いくらいピタリとハマる寿の不思議な魅力に気づき始めていく……。

 そして本作で最も印象的だったシーン&セリフは、カメラを向けた真央に対して寿がセリフを言う一連の場面。

「黄昏アウトフォーカス」より ©︎じゃのめ/講談社

 「俺の事 好きなんじゃねぇの?」

 カメラに向けて放った寿の言葉がレンズを通して真央に届く。それは真央にとってただのセリフの域を超え、自分の心を激しく揺さぶり寿に対する感情に気づかされるのでした。

 でも同時に、気づきたくなかった、寿には想い人がいるから……。そんな真央の心情を「始まる前に終わる恋なんか、気づきたくなかったのに――」というあまりにも切ない言葉で表現した作者に感動しつつ、鳥肌の立つシーンでした!!

 真央の想い、そして彼らの作る作品がどうなっていくのか、この先は読んでのお楽しみ♪

 そして、作中で映画というストーリーを作っていく本作の物語は不思議な二重構造になっていて、独特な、まるで合わせ鏡のような奥深さを感じさせてくれます。

 真央のカメラを通して、皆さんにはどんなストーリーが映るでしょうか? ぜひ読んで頂きたい1冊です。

おそるべし、方言の破壊力!(キヅイタラ・フダンシー)

 個人的な話になりますが、方言って萌えますよね! 「セリフがすごいBL」ということで、いろいろな作品を読み返していたんですが、改めてセリフを意識していたら方言の破壊力を実感した次第でして……(笑)。ということで、今回はこちらの作品を紹介させていただきます!

 九號さん「放蕩息子と恋の穴」(徳間書店)

 夜遊びが激しく、手も早くて女の子泣かせの高校生・蒼佑。海外出張が多い母親からの提案で、田舎の親戚の家に預かってもらい更生させられることに。そんな提案に蒼佑が二つ返事でOKしたのは、初恋の人、いとこの「みのりちゃん」が滞在先の上瀬家にいるからでした。小さい頃、大好きだった年上のみのりちゃん。今では高校教師になっていると知り、美人高校教師と1つ屋根の下の暮らしを妄想して、東京からはるばる田舎に移ってきました。

 駅に着いた蒼佑を出迎えてくれたのは、さわやかなマッチョお兄さん。みのりちゃんの弟だと思い込んでいた蒼佑に突き付けられた衝撃の事実、それは、子供の頃は女の子のように可愛かった「みのりちゃん」が、実はこの男・穣(みのり)だったのです! 食欲もなくすほどショックを受けた蒼佑でしたが、優しく微笑みながら語りかけてくれる穣に当時の面影を感じて意識するようになっていきます。そのきっかけとなるのがこのシーン!

「放蕩息子と恋の穴」©️九號/徳間書店

 振り返りざまに不敵な笑顔で「それと学校では『先生』って呼びんさいよ?」という穣に、蒼佑の右胸と同じく“きゅん……”としてしまう私なのでした。方言(おそらく広島弁?)のなんとも言えないあざとさよ!

 テンション高めに書いてしまいましたが、ストーリーはちょっと重め。ひょんなことから穰がゲイであることを知ることになった蒼佑。それでも幼少期の「みのりちゃん」から中身は変わっていない穣への恋心を自覚した蒼佑は、直球でアタックをしていきますが、過去のトラウマからゲイであることをひた隠しにしてきた穣の気持ちのハードルは高く、恋路はトントン拍子では進みません。穣の弟や幼馴染と関わりながら、じっくりと前に進んでいく2人のお話が楽しめます。登場人物がとてもいい人揃いで、電子版限定収録の番外編での幼馴染とのやり取りは思わずジーンときてしまいますよ!

 蒼佑もただチャラいだけではなくて、自分にも他人にもまっすぐで、意外にも純愛を貫くところが素敵でした。ネタバレになってしまうので、今回ピックアップしたセリフは割と前半の穣の萌え発言にしましたが、作中では特に蒼佑のセリフや思いがとても心に響くものが多いので注目です!

 絵もとてもきれいで読みやすく、お話重視ですがHシーンもとてもエモーショナル&官能的(穣さんめっちゃセクシー!)で読み応えたっぷりでした。ノンケとゲイ、生徒と教師……いろいろなしがらみや葛藤を乗り越える純愛ストーリー、ぜひ読んでみてください!