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「ゾルゲを助けた医者」書評 息子が記し、孫が編んだ弾圧史の証言

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2020年05月30日
ゾルゲを助けた医者 安田徳太郎と〈悪人〉たち 著者:安田 一郎 出版社:青土社 ジャンル:伝記

ISBN: 9784791772575
発売⽇: 2020/03/23
サイズ: 20cm/277p

小林多喜二の拷問死体を検分し、ゾルゲ事件で有罪判決を受けた町医者、安田徳太郎。彼の信念を支えたものとは−。徳太郎の長男が、明治から終戦直後までの日本の出来事を織り交ぜなが…

ゾルゲを助けた医者 安田徳太郎と〈悪人〉たち [著]安田一郎、[編]安田宏

 ある医師の軌跡を息子が記録し、孫が編む。まさに「安田家三代の合作」である。徳太郎は近代史の反体制運動史に名が出てくる。一方で戦後には歴史書『人間の歴史』を執筆し、ベストセラーにもなった。
 徳太郎とはどんな人物か。長男一郎(心理学者)が評伝風に書き残した。安田家は京都の足袋屋。徳太郎は京都帝大医学部を出て付属病院に。ストライキを起こした三高学生の健康診断を引き受け病院を去ることになり、東京に出て診療所の医師になった。いとこの山本宣治(生物学者・労農党代議士)は、治安維持法改正に反対し右翼に殺害されている。徳太郎の心中に権力への怒りが根づいていた。
 本書には、渡辺政之輔夫人丹野セツや、ゾルゲ事件に関わった宮城与徳らの隠れたエピソードが記され、岩田義道や小林多喜二の拷問死に対する医師の良心がつづられている。弾圧史の証言にもなっている。
 編者の祖父、父への慈しみが行間から浮かぶ。