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橋本治「そして、みんなバカになった」など注目の新書5選(朝日新聞2020年6月6日掲載)

『そして、みんなバカになった』

 芸人にいじられて喜び、雑誌がグラビア中心になって長い文章を読まなくなり、今やバカの最終局面に――。昨年他界した作家のインタビュー集。「背伸びをしてわからないことを咀嚼(そしゃく)するなかでしか」ものはわかるようにならない。自分なりの体系、教養があれば楽と語る。
★橋本治著 河出新書・924円

『「自閉症」の時代』

 近年ブームとなった江戸時代の画家・伊藤若冲やアニメ作家・新海誠のヒット映画「君の名は。」。さらに村田沙耶香の『コンビニ人間』やノイズキャンセリング機能付きヘッドホンなどの社会現象を手がかりに、21世紀という時代の特徴が「自閉的傾向」にあると論じる文化論。
★竹中均著 講談社現代新書・1034円

『音楽が聴けなくなる日』

 薬物事件を起こしたミュージシャンの作品公開を自粛する動きが年々強まっている。一体誰のためなのか。ピエール瀧さんの逮捕後、レコード会社に対応の撤回を求めて署名活動をした社会学者らが警鐘を鳴らす。巻末に過去50年の音楽自粛の年表も。
★宮台真司・永田夏来・かがりはるき著 集英社新書・902円

『現代アートをたのしむ』

 美しさや価値、作品の存在する意味を問いかける現代アート。難しい、よくわからないと言われがちだ。作家と学芸員の2人が、定義や歴史、楽しみ方を伝授し、その「扉」を開く。オラファー・エリアソンやChim↑Pom(チン↑ポム)ら、注目作家も紹介する。
★原田マハ・高橋瑞木著 祥伝社新書・1320円

『まんが訳 酒呑(しゅてん)童子絵巻』

 国際日本文化研究センターが所蔵する絵巻にコマ割りが施され、現代語の文章が付いて、まんがになった。『道成寺縁起』『土蜘蛛(つちぐも)草子』も収録。絵巻文化の成立と発展、「まんが訳」の制作工程や意義など巻末の解説も充実している。
★大塚英志監修、山本忠宏編 ちくま新書・1078円=朝日新聞2020年6月6日掲載