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畑中三応子さん「〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史」インタビュー 深い国際性と国産信仰と

畑中三応子さん

 「日本の食はすごい」――。当たり前のように思えるこの感覚は、どこから来たのか。ざっくりと美化され、自画自賛される日本食への思い込みに違和感を持った。昨年度の国内の食料自給率はカロリーベースで38%。多くを輸入に頼り、矛盾している。「正しく知って、誇りにできるものにしたいと思いました」

 違和感を解明するヒントになった一つは、飲食店で見かける「当店はすべて国産米です」の言葉だ。何となく安心して食べられる、付加価値を与えるマーク。調べると、08年の事故米不正転売事件を受けて制定された法律で、産地の明示が求められていた。「国産だと信用してしまう感覚は、ほとんど信仰」と断じる。

 独り歩きする「国産信仰」「日本食礼賛」。だが歴史をひもとけば、食中毒問題や食糧危機など多くの失敗があった。そして見渡せば、ラーメン、ピザ、ハンバーガー、多くの海外の食べ物が溶け込んでいる。多様性を受け入れ、「世界に類をみない国際性の豊かさ」がある。全てを含め「情けなくも愛(いと)おしいメイド・イン・ジャパン」なのだという。

 80年代初めから食に関する編集や執筆を仕事にし、もう40年ほどになる。地場の食材にこだわるフランス料理人たちを追いかけ、畑や海を訪れ、狩猟について行ったことも。250冊超の本を手がけ、一貫して料理を通した「人間ルポルタージュ」を世に送り出してきた。ここ数年は自らの執筆に重点を置く。「食の記録を俯瞰(ふかん)できる本は意外に少なく、今回書けて良かった」と話す。

 そしていま、新型コロナウイルスの影響で外食産業は深刻な打撃を受けている。一方で、在宅生活で生鮮食品を利用する頻度が高まれば、おのずと自給率が上がる可能性があると捉える。日本の食文化にとって、前向きな変化になる予感がする。(文・森本未紀、写真・横関一浩)=朝日新聞2020年8月29日掲載