「クロマトピア」書評 顔料と色材が歩んできた歴史
評者: 温又柔
/ 朝⽇新聞掲載:2020年10月31日
クロマトピア 色の世界 写真で巡る色彩と顔料の歴史
著者:デヴィッド・コールズ
出版社:グラフィック社
ジャンル:芸術・アート
ISBN: 9784766133523
発売⽇: 2020/09/08
サイズ: 22cm/223p
クロマトピア 色の世界 写真で巡る色彩と顔料の歴史 [著]デヴィッド・コールズ
セピア色はイカの墨袋から生み出された? エイドリアン・ランダーによる視覚を酔わせる色彩鮮やかな写真とともに顔料と色材が歩んできた歴史を堪能できる本だ。
人類は、鉱石、有毒金属、昆虫、動物の骨や糞尿(ふんにょう)などあらゆるものから「色」を取り出してきた。絵描きたちが焦がれ、王侯貴族らが独占した「色」もある。その神秘の歴史を愛情と情熱を込めて語る著者は、世界でも一目置かれる専門家用の油絵具(えのぐ)メーカー、ラングリッジ・アーティスト・カラーズの創業者。少年の頃に画材屋で、小瓶に詰まった「きらめく宝石のような」顔料に魅せられて以来、絵具の製造に半生を懸けてきた人物だ。
青、紫、赤、オレンジ、黄、緑……私たちがふだん何気(なにげ)なく目にしている「色」は、如何(いか)にして創られるのか。その背景を知れば知るほど、芸術家たちが作品を制作するための道具や、装飾としての役目を越えた、「色」そのものへの興味が湧いてくる。