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小説から音楽、そして映画へ
――YOASOBIの楽曲「たぶん」の原作小説をもとにした映画「たぶん」が11月13日に公開されます。YOASOBIのお二人は実写化が決まった時はどう思いましたか?
Ayase:うれしい気持ちはありつつ、同じくらい実感が湧きませんでした。原作小説があって、音楽があって、今度は実写映画化。映画となるとかなりスケールの大きな話だと思うので、感動とともに「どうなっていくんだろう?」と不思議な気持ちでしたね。映画化の話を聞いたのっていつ頃だったっけ?
ikura:たぶん……あ、「たぶん」とか言っちゃった(笑)。たしか夏頃だったと思います。7月に楽曲の「たぶん」をリリースした時には、まだ映画化の話はなかったんですよ。だからこの企画自体、すごくスピーディーに決まっていったと思います。
YOASOBIはミュージックビデオもアニメーションなので、実際の俳優の方々がYOASOBIの作品と関わるのはこれがはじめてです。だから話を聞いたときから、実写で描かれる「たぶん」はどんな物語になるんだろう? とすごくワクワクしていて。すばらしいコラボができたと感じています。
――木原さんは今回の話を聞いたときどう感じましたか?
木原:日常的にYOASOBIさんの楽曲を聴いていたので、まさか自分が出演というかたちで携われるなんてびっくりしました。映画自体ほぼ初挑戦なので、それも驚きでしたね。
親友同士が念願の初共演
――小野さんはikuraさんと中学3年生の頃からの同級生で、「たぶん」の撮影にもかなり気合いを入れて臨まれたと聞きました。
小野:お話をいただいた時はうれしくてたまらなかったです。実は当時、別の主演の映画の撮影中だったのですが、なかなかうまく演技ができなくて葛藤していて。そんな時にこの話が決まったので、つらい時も頑張れる、日々のエネルギーになっていました。
ikura:撮影がはじまる前に「一緒にやるんだね」って連絡を取りあって。お互いに歌手と女優という夢を中学生の頃から追いかけていて、その道の途中でいつか一緒にやれる日が来たらいいねと話していたので、こんな素敵なかたちで叶ってうれしいです。
撮影の現場にも見学に行ったんですけど、終始うるうるしながら見ていました(笑)。学生時代から親友として、彼女の夢を応援していたので。女優として仕事をしている姿ははじめて見たんですけど、アクションがかかる直前になると顔つきが変わるんですよ。「あぁ、プロの女優さんになったんだな」と実感したし、その作品に自分が関われていることもとてもうれしかったです。
――ちなみに、お二人はどんな学生だったんでしょう?
ikura:うーん……わりとまじめなんだけど、やんちゃもしていましたね。こんな言い方で合ってる?(笑)
小野:そうだね(笑)。二人とも度が過ぎたことはしないように、いかに自由に学校生活を送れるか、ギリギリのラインを楽しんでいました。本当にいつも一緒に遊んでいましたね。
「一人」という言葉の空気感
――「たぶん」は大学生カップルの「ササノとカノン」、高校生の「川野と江口」、社会人の「クロとナリ」の3組の男女の物語で展開します。小野さんと木原さんが演じた「ササノとカノン」は同棲していたカップルが別れを選ぶというお話で、原作小説の『たぶん』に一番近いストーリーになっています。
木原:僕が演じたササノは大学4年生で、僕と同い年。仲が良い友達に聞いた大学生活や就活の話も思い出しつつ、等身大で演じることを意識して役を作っていきました。
小野:カノンはしっかりしていて、ちょっとやんちゃなササノのことを放っておけなくてかわいいと思っている女の子だと思います。ササノへの接し方にはすごくこだわりました。強気で、自分の不安や思いをなかなか口に出せなくて、だけどそこにはササノへの優しさや愛情があって。なんでこう言ったのかな、どうしてこういう行動をしたのかな、と細かく行間を読んで、脚本にない部分まですごく想像しながら演じました。
――原作の小説や音楽の「たぶん」からインスピレーションを受けた部分はありますか?
木原:小説や曲が終わったあとの、虚無感のような切なさが印象的でした。「たぶん」の物語はすべてこの切なさでつながっていると思うので、自分の演技でもしっかり表現したいと思っていましたね。
小野:私が音楽の「たぶん」ですごく好きなのが、冒頭の「一人で迎えた朝に」というところ。ikuraちゃんのつぶやくような歌い方も良いし、「一人で」という言葉からは色んな想像ができますよね。その空気感を演技にも取り入れたいなと考えていました。
Ayase:小野さんが言ってくれた通り、「たぶん」の歌詞では「一人」「二人」という言葉をよく使ってきます。「一人」という言葉があるからこそ昔は二人だったことを感じさせたり、逆に「二人」と表現することで今の一人により寂しさを感じたり、そんなことを考えながら曲を作っていました。
自分ともう一人の誰かという二人でいたのが、そうじゃなくなろうとしている。「たぶん」に込めたその関係性のあいまいさを、映像や演技でうまく表現していただいたなと感じました。
どんな関係にも別れがある
——ikuraさんは映画を見てどんな風に感じましたか?
ikura:二人の醸し出すササノとカノンの雰囲気が、楽曲の「たぶん」に対する私のイメージとすごく近くて。空気感や間合いがすごく心地良かったです。それから高校生でサッカー部員とマネージャーの「川野と江口」、社会人カップルの「クロとナリ」という原作にないパートが加わったことで、どんな関係にも別れがあって、それはありふれたことなんだ、と感じる切なさもありました。
「たぶん」という言葉も色々なシーンで使われていますよね。どちらかというとネガティブな話の流れで使われることが多い言葉だと思うんですけど、映画の中では「たぶん……ありがとう」とポジティブに使われているシーンがあったのが印象的でした。「たぶん」という言葉の意味、そして作品世界の広がりが感じられる素敵な映画だと思います。
木原:「たぶん」という言葉は色々な場面で使いますよね。それと同じように、色んな恋愛があって、色んな事情のカップルがいて。僕が演じたのは一組のカップルだけですが、3つの物語が組み合わさったことで色んな方が見て楽しめる映画になったと思います。
――最後に、Ayaseさんから「たぶん」についてメッセージをお願いします。
Ayase:原作小説があって、YOASOBIの楽曲があって、ミュージックビデオがあって、そして今回は映画。「たぶん」という一つのストーリーから4つも作品が生まれているのを僕自身すごく面白いと感じています。
生活の中で「たぶん」という言葉を使う機会は多いと思うし、恋愛や、大切な人との別れを経験して、このストーリーの登場人物達と近い感情を抱くこともあるんじゃないかと思います。作品に触れた人が、それぞれ自分の生活とリンクさせながら楽しんでもらえたらうれしいです。