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高山なおみ「自炊。何にしようか」 飾らず簡単においしいものを

『自炊。何にしようか』の表紙・裏表紙のカバー

 暗いテーブルの上に並ぶ、ラップに包まれた白いご飯。この素晴らしい表紙が実現したのは、写真家の齋藤圭吾さんとデザイナーの立花文穂さんが高山さんの仕事をよく知っているからだ。タイトルは『自炊』。自炊って、一人暮らしにはハードルが高い。スーパーで半額になった弁当を食べるほうが楽だし安上がりなのに、なぜ自炊するのか。そんな問いに、この本は答えをくれる。

 冷蔵したラップ包みご飯をレンジで温めず、セイロで蒸すところが、高山さんの料理の素晴らしさだと思う。ラップご飯は便利で美味(おい)しい。そして、レンジでチンするよりも、蒸したほうが美味しい。美味しいものや楽しいことは、意外と簡単に自分で生み出せる。きっとそんな風に考える高山さんの料理には飾ったところがなく、写真と本のサイズ感がその世界をピタリと言い当てている。ページを繰るだけで、家で過ごす時間が愛(いと)おしくなり、いつか一人で暮らす日が楽しみになる。=朝日新聞2020年12月5日掲載