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「実践 自分で調べる技術」など注目の新書5選(朝日新聞2020年12月5日掲載)

『実践 自分で調べる技術』

 複雑な世界の問題を、国家や専門家に任せず解決するため、自分で「調べよう」と、環境社会学者とNPO市民科学研究室の代表理事はいう。調査の設計、文献・資料、聞き取り、データ整理や発表の仕方を説明。2004年の宮内著を全面改訂し、「リスクを調べる」の章を加えた。
★宮内泰介、上田昌文著 岩波新書・968円

『教員という仕事』

 過大な業務負担による長時間労働で教職は「ブラック化」しているといわれる。公立高校の教員として約20年の勤務経験を持つ著者が、現役教師にインタビューを重ねて実情を明らかにするとともに、進行中の「教育改革」は中断して点検し直すべきだと主張。具体的な改善策を提言する。
★朝比奈なを著 朝日新書・869円

『ルポ 入管』

 在留資格のない外国人を一時収容する入管施設で、収容が長期化し、外国人が自殺したり、ハンストの末に餓死したりする事態に。多くの当事者への取材から、密室内の「無法」を明らかにする。「外国人の“おもてなし”を誇らしげに宣伝する国家の現実の姿がここにはある」と著者はいう。
★平野雄吾著 ちくま新書・1034円

『元号戦記』

 元号選定の取材を長く続けてきた毎日新聞記者の著者は、安倍前首相も「令和」を考案した万葉学者も、元号選定に関しては最後の1ピースを埋めたに過ぎないという。では、だれがどのように下準備をしてきたのか。「特命官僚」や漢籍研究者らへの取材をもとに、明治以降の元号選定の歴史をつづる。
★野口武則著 角川新書・990円

『みんなの民俗学』

 農山漁村に伝わる民間伝承を研究するイメージのある民俗学。しかし、人間を「俗(ヴァナキュラー)」の観点から研究するのが民俗学であり、現代を知るための学問だと著者は言う。喫茶店のモーニングやB級グルメなど身近な対象を論じながら、現代民俗学の世界を紹介する。
★島村恭則著 平凡社新書・968円=朝日新聞2020年12月5日掲載