自分自身のコンプレックスをさらけ出すエッセーを書きました。昨年の1月末に執筆のお話をいただいてからコロナの自粛もあり、家にこもって自分を見つめ直したことで、筆にエネルギーを授かりました。体のなかでよどんでいた違和感、鈍痛のようなものの正体が、このタイトルに集約されています。
例えば、(東京の)二子玉川(ふたこたまがわ)のことを「にこたま」とはどうしても略せない。ささいなことが引っかかるんです。いま言ったのもいやだから、家で二子玉川、二子玉川って何回か言い直します。最近はエゴサーチしているから、もう少しでエゴサって略す権利を得られますかね。
大学在学中にデビューして、芸歴26年が経ちました。あるあるネタ「小心者克服講座」で売れた20代は、いじられキャラというテレビのイメージが付いてしまって。自分の本質とかけ離れて、このままでは破綻(はたん)すると漠然とした不安がありました。
ある日、出川哲朗さんに「ポスト出川は、お前だからな」と言われ、ひざに手をポンと置かれたんです。生半可な気持ちではいじられ芸人は務まらないと気づき、かじを切りました。流れ流されて30代で東京MXテレビ「5時に夢中!」のMCに漂着しました。
これまでの人生は、少しずつ大地に根を張っていく時間だったのかな。どこにもなじめず、染まらない。何者でもない存在であることに価値があると少しずつ思えるようになりました。
これから年を重ねていくなかで、タモリさんのような、ギラギラした部分がそぎ落とされた人になっていけたらなと考えています。大好きな羊を見るために通っている、アイスランドからユーチューブを配信するのも選択肢の一つ。本気ですよ、いま物件を探していますからね。(聞き手・森本未紀 写真・片山奈緒子)=朝日新聞2021年1月20日掲載