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「桂浜水族館公認 飼育員のトリセツ」書評 20代イケメンの発信でV字回復

評者: 須藤靖 / 朝⽇新聞掲載:2021年01月30日
桂浜水族館公認飼育員のトリセツ 著者:桂浜水族館 出版社:辰巳出版 ジャンル:動物学

ISBN: 9784777826865
発売⽇: 2020/12/02
サイズ: 26cm/111p

桂浜水族館公認 飼育員のトリセツ [監修]桂浜水族館

 2年ほど前に、某テレビ番組で桂浜水族館がとりあげられていた。館長をはじめとする職員の皆さんの対応が、本当に放送して良いのかとヒヤヒヤさせられたほどの面白さで、度肝を抜かれた。今ではハマスイの名前で知られ、全国区の人気を誇っているそうだ。
 はるか昔に帰省した際、たまたま子供を連れて入館した時の驚きは忘れられない。水槽の前には魚の種類ごとに「しょうゆをかけて食べてみいや」「すり身もえいぜよ」「かす汁にしてもいけらぁよ」などのお薦め調理法が事細かに書かれていたのだ。県民から「水族館とちゃう、生簀(いけす)や」とけなされていたというのも納得できる。
 来館者減少に加え、2014年には飼育員が一斉離職し大ピンチを迎える。しかしその後、館長が攻めの改革戦略を推進。奇跡のV字回復を成し遂げた。
 その原動力は20代が中心のイケメン飼育員の皆さん。若さを最大限活用しつつ、SNSでハマスイの魅力を発信し続けている。信じがたいことにファンクラブまであるらしい。
 おかげでつい調子にのって、飼育員とスタッフの皆さんのプロフィルとインタビューからなる本書まで出版してしまったのだ。
 「ただただ嬉(うれ)しい。増刷とかになったらどうする?めっちゃ調子にのるで!!」との館長の言葉が、このトリセツの雰囲気を物語る。
 看板キャラクターおとどちゃんは、館長がモデル。「ロケットおっぱい」が強烈な試作品を初めて見たときは「えらいことになってもうた」と思ったそうだ。
 何とハマスイは年中無休なのだが、コロナ禍によって戦後初の休館に追い込まれた。しかしそれが逆に飼育員がそろって行動する時間を生み、現在のSNSフォロワー数は20万人を超えた。まさにピンチはチャンス。「フォロワー数と来館者数のギャップが日本一激しい水族館」とうたわれるハマスイ。これからもこじゃんと頑張ってや~。
    ◇
かつらはますいぞくかん 1931年開設。2013年公益社団法人化。高知市の観光名所・桂浜にある水族館。