1. HOME
  2. 書評
  3. 『ドイツの学校には なぜ「部活」がないのか』書評 体育会系とは異なるコミュニティ

『ドイツの学校には なぜ「部活」がないのか』書評 体育会系とは異なるコミュニティ

評者: 本田由紀 / 朝⽇新聞掲載:2021年02月06日
ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間 著者:高松 平藏 出版社:晃洋書房 ジャンル:スポーツ

ISBN: 9784771034310
発売⽇: 2020/12/01
サイズ: 19cm/193p

ドイツの学校には なぜ「部活」がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間 [著]高松平蔵

 書名だけ見ると、ん?部活の本?と思うかもしれない。しかし本書は、ドイツにおけるスポーツクラブの繁栄にとどまらず、社会全体に広がる「公共空間」(日本の「お上」とは違う)、「連帯」と「助け合い」の意識(日本の「絆」とは違う)、「タメ口」カルチャー(日本の「体育会系」とは違う)、教育における「自己決定」の重視(日本の「スポーツバカ」とは違う)等々が幅広く論じられている。
 余暇時間が確保されたうえで、楽しみながらデモクラシーを学び、移民など社会的弱者を包摂する社会運動としての意味も持つスポーツクラブ。彼我のあまりの違いに啞然とする。
 むろんドイツも揺れ動いてはいる。いじめもあるし、子どもの勝利に熱狂する親もいる。また、キリスト教など社会の成り立ち自体が大きく異なり、容易にまねはできない。出羽守(でわのかみ)ですか?とも言われるだろう。だが、違う国から学べるものは多い。出羽守上等!なのである。