表だって口にされないが、闘病記の当事者語りには序列がある。痛みや苦しみはその人にしかわからない、数値で測れないものなのに、例えば病名が「弱者」としての「強さ」を与えてしまうようなこと。
病気でもないのに次々と謎の不調が発生し、異常に疲れやすいという「虚弱体質」はどうだろう。一見深刻さが少なく、ありがちに聞こえる。「弱さ」が「弱い」と。でも、虚弱体質のため「初老みたいな身体の二十代」を過ごしてきたという著者の体験を知るほどに、あまり語られてこなかった「弱さ」に驚いた。
中年になるとガクッと体力が落ちるなんてよく言われるが、著者の不調が始まったのは21歳。過眠をきっかけに無数の不調が現れ、生活に支障が出るほどの疲労で身体が動かない。
大学卒業後、専業作家となったのもフルタイム勤務が難しいという引き算からの選択だ。複雑な胸中だったろう。でも自分を客観的に分析し、もっている力を活(い)かすことが有効な生存戦略となると、本書が実証しているように思える。
転機が訪れたのは20代後半のこと。食生活の改善で体調が良くなり、眼鏡をかけると不眠症が治り、膝(ひざ)の痛みには筋トレが功を奏した。枚挙に暇(いとま)がない工夫と挑戦の実践記録にはセルフケアのヒントが山盛りだ。
それでも、頭と身体の稼働時間が短いため必死に働いても100万円に満たない年収。長時間座ると切れ痔(じ)がいぼ痔に……友人にも語りづらいことまで赤裸々に、ユーモアも交えて綴(つづ)る筆から伝わるのは「こういう人もいるんだと知ってほしい」という切実な願い。
これから30代。体質は変わらない。だけど、虚弱について書くと届く共感の声から、もう独りではないと思えるようになった。宣言のような書名は、虚弱仲間へのハグなのかもしれない。=朝日新聞2026年2月7日掲載
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扶桑社・1760円。25年11月刊。9刷3万部。20~40代の女性が主な読者だが、自分も虚弱だとする男性からの反響も。虚弱なりに生きる話をしてもいい、というメッセージに共感が寄せられている、と担当者。