2月9日は、「ふ(2)く(9)」の語呂合わせから、「服の日」なんだそうです。ステイホームが続いて、最近はあまり服装に気を遣うこともなく過ごしているという人も多いのではないでしょうか。もれなく筆者もそんな一人なのですが、おしゃれ魂に火をつけてくれたのが「お江戸ファッション図鑑」です。
本書は、イラストレーターの撫子凛(なでしこ・りん)さんが「お江戸スタイルブック」という名の同人誌やSNSのハッシュタグで発表していたイラストをベースに、専門家監修のもと書籍化した一冊。浮世絵に登場する江戸の人々の着こなしを現代風に描いたイラストに、髪型や帯の結び方など細部の資料もあわせて、江戸時代の服飾文化の資料集としてまとめられています。絵師の方には作画資料にぴったりです。元絵となった浮世絵と見比べてみるのも一興。
監修者である武蔵大学教授の丸山伸彦さんによれば、「流行(モード)」が一般庶民の間で発生したのは、欧米諸国に約100年先駆けて江戸時代前期の日本だといいます。本書を眺めていると、着物という基本的な形のバリエーションがあまりない中で、江戸の人々が生地の文様や帯の結び方、小物の合わせ方などでファッションを楽しんでいるのがよくわかり、見ていて飽きません。
中でも、感心したのが、女形の野郎帽子。男色文化につながる若衆歌舞伎が幕府によって禁止され、前髪をなくさなければならなくなった女形たちが月代(さかやき)をあらわにしたくないと編み出したんだとか。
制約がある中でも、ファッションを楽しむ心意気。ステイホームという制約の中でも、忘れずにいたいものです。