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映画「ブレイブ -群青戦記-」に主演の新田真剣佑さんインタビュー 「一所懸命」が一番好きな言葉になった

文:根津香菜子、写真:齋藤卓行

現代の高校生VS戦国武将

――新田さんはこれまでにも『ちはやふる』のような実写化作品への出演もされていますが、原作はあえて読まないことが多いそうですね。

 僕は原作と映画は違うものだと思っているので、原作はあまり読まないんです。今作のことは脚本を読んで初めて知りました。普通「戦いもの」となると、同じ武器を使ったり、同じ戦い方だったりするんですけど、今回は全く違っていて、戦国時代という「過去」に生きる武将たちと「現代」の高校生たち、それぞれの時代に合った戦い方だったので、そこがすごくユニークだなと思いました。

――ラグビー部や野球部など、それぞれの部活で培った身体能力と現代の知識を活かし、戦国武将たちにどう立ち向かっていくのかというところも見どころですよね。

 僕もそこが面白いなと思いました。現代の高校生と戦国時代の武将とでは、武器も戦い方も全く違っていて、高校生たちは工夫した戦い方だなと思います。特に「特進クラス」や科学部の戦い方や戦術は見どころの一つですね。

 ドローンを使って敵地を視察するのですが、そのドローンはどこから持ってきたのかとか、電気は通っていないはずなのに、充電はどうしたのかとか(笑)。疑問はたくさんあるんですけど、いいんですよ。

――演じられた「西野蒼」をどういう人物と捉えましたか?

 蒼は元々内気で、幼なじみの考太の後ろに隠れてばかりいて、いつも考太に譲ってしまうような男なんですが、仲間たちや松平元康の姿や言葉に感化され変わっていくので、最初と最後でメリハリがあるように計算しながら「蒼」という役を組み立てていきました。

 撮影に入る前に自分の中で大まかなビジョンはあったんですけど、撮影をしながら自分が思ったこと、感じたことを本広(克行)監督とその都度相談をして、微調整をしながら蒼を作り上げていきました。

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

――演じながら蒼をつかんでいったのですね。脚本上での蒼と、実際に演じてみた蒼とで何か違いや気づいたことはありましたか?

 その場その場で「思っていたのと違うな」と思ったこともあったと思います。撮影中は必死すぎて、その時どうだったかあまり記憶にないんです。でも「自分が思っていたのと違うので変えてもいいですか?」と思う時は、毎回監督と相談していた気がします。本広監督は「自分が違うと思ったら、正解が見つかるまで何度でもやろう」とおっしゃってくださったので。

弓道部なら、極めていたかも

――殺陣に弓、乗馬とアクションシーンも満載でしたね。

 アクションに関しては全く練習しなかったです。剣道や乗馬は元々できますし、本作でやることも聞いていたので、現場でもすぐにできました。弓道だけは初めてだったんです。水球とかで球を投げる経験はあったのですが、「矢を射る」ということは流鏑馬でしかやったことがありませんでした。この映画でやる弓道の流派があり、撮影に入る数カ月間から習いに行きました。今作での流派のやり方と流鏑馬は、細かいところですが違いがあったので、そこがカメラに映る、映らないは関係なく、そういったところも大切なので、僕自身が知っておきたかったんです。

 矢を射るのは楽しかったですね。もし自分が部活でやっていたら、大分極めていただろうなと思います。

――初めは仲間の救出に参加しようとしなかった蒼ですが、前半と後半では、蒼の目つきや顔つきが明らかに変わっていましたね。元康や信長にも「いい目をしている」と言われていましたが、蒼の目に力強さが宿った瞬間や、気持ちの面で変わったなと思われたのはどんなことでしたか。

 確実に「ここだな」というシーンがあります。映画の後半で、仲間を失った後に一人芝居をするシーンがあるのですが、そのシーンは僕が観てもすごくいいシーンだなと思いました。それがどのシーンかは、映画を観てくださる皆さんに探し当てていただきたいのですが、あのシーンで蒼の心の中がガラッと変わりましたね。ネタバレになるのでどこまで言っていいのか分かりませんが、蒼にとってすごく大切で、人生が変わったシーンだと思います。

――仲間を助けるために丸根砦に向かう朝、意を決した蒼が木刀を打ち込む姿がとても印象的でした。あのシーンはどんな思いがありましたか?

 先ほど言ったシーンがあり、蒼の気持ちが変わった直後だったので、セリフはないのですが、蒼の中で覚悟を決めたというメッセージが込められているシーンじゃないかと思います。僕も試写を観てそのシーンが印象に残りましたし、やりきったなと思えるシーンになりました。

自分の「言語力」を信じている

――作中で、松平元康が「一所懸命」という言葉について語るシーンがあります。後に蒼を導くこの言葉の意味がとても心に残ったのですが、新田さんはこの言葉についてどう思われましたか?

 僕もこの映画でこの言葉に触れて、一番好きな言葉になりました。一カ所の領地を命懸けで守るという意味の「一所懸命」という言葉は、戦国という時代だからこそ生まれたんだなと思いました。この言葉はこの作品から得た宝ですし、これからも「一所懸命」が一番好きな言葉になるんじゃないかなと思っています。

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

――映画では「自分の力を信じる」という言葉が何回か出てきますが、新田さんが信じているご自身の力はなんでしょうか。

 言語力ですかね。日本語と英語が話せるので、もっと英語を使わなかったらもったいないなと思います。多くの人とのコミュニケーションが取れるツールですし、国を超えてお仕事ができればいいなと思っています。

――本作の見どころを教えてください。

 キャスト全員がスタントなしのアクションシーンであるということが割とピックアップされていますが、僕は蒼だけではなく、高校生たちそれぞれの人間の成長という部分も見てほしいです。大切な人から大切な人へ、思いを受け継いでいくというメッセージが込められている。そういうテーマのある作品になっているので、それぞれの人としての成長物語を見てほしいです。

 緊迫するシーンもたくさんあるのですが、ちょっと笑えるシーンもあったりするので、そこで少し和めばいいなと思います。ぜひ、そんなところにも注目していただきたいです。

――ここからは、新田さんの読書ライフについて少し教えてください。事前に得た情報によりますと、高校生の頃に読んだ『ウォールフラワー』(スティーブン・チョボスキー作)がお好きだそうで。

 本はあまり読んでこなかったので、唯一好きと言えるのが『ウォールフラワー』なんです。きっかけは学校の授業でした。だから読んでみたというのもあるのですが(笑)、作品の内容や世界観が面白かったので、これは読んで良かったなと思いました。

――これから読んでみたい、または気になっている作品はありますか?

 前々から興味があるのが『HUNTER×HUNTER』です。アメリカにいた頃にアニメを観ていて、大好きなんです。特に「キメラ=アント編」が好きで、キメラアントの王・メルエムと盲目の少女・コムギのシーンは最高ですね。無限の可能性を秘めた設定があって、なんて面白くて、話題が尽きない作品なんだろうなと思うので、漫画も読んでみたいです。

――ほかにはどんなジャンルに興味がありますか?

 本に限らず、ミステリー、サスペンス、アクション、ヒューマンの映画や海外ドラマが好きでよく見ます。中でもミステリーやサスペンスって、ドキドキするじゃないですか。そうでないと見ている人も楽しめないし、自分もやっていて楽しくないので、ただの「いい話」で終わる作品はあまり好きではないです。ミステリーは最後の最後まで結末がどうなるか分からないから好きですね。