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「子どもたちがつくる町」書評 本来もつ力を「開く」ことに奮闘

評者: 阿古智子 / 朝⽇新聞掲載:2021年06月12日
子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援 著者:村上 靖彦 出版社:世界思想社 ジャンル:福祉・介護

ISBN: 9784790717539
発売⽇: 2021/04/27
サイズ: 21cm/268p

「日雇い労働者の町」と呼ばれる大阪・西成。生活保護受給率は23%にのぼる。この町で型破りな子育て支援活動をする5人にインタビューし、自発的で変化に富んだセーフティーネット…

「子どもたちがつくる町」 [著]村上靖彦

 日雇い労働者の多い大阪の西成に精神分析・現象学の学者が通い、子どもたちを、子どものもつ力を「開く」ことに奮闘する子育て支援団体の人々を描いた。
 日本の虐待相談件数はうなぎのぼりだが、西成区の件数は横ばいだ。貧困も虐待も可視化され、「子どもを地域で育てる」のが当たり前になっているからだ。
 子どもは施設に閉じ込められず、地域に居場所を確保して親子で暮らし続ける。路上生活者に挨拶(あいさつ)する実践は子どもへの人権教育となり、昼間一人で家にいる子どもを保育園へ呼び込む活動につながった。
 制度の枠組みから外れる「はざま」にニーズを見つける姿勢からは、制度につながる新たな動きが生じている。法が人を統治するのではなく、人が本来もつはずの権利を起点とし、その上に法をもとづけるのだ。
 行政から降ってきた制度ではなく、子どもたちの声が組織の形を決める。ここに、この町が生まれる所以(ゆえん)がある。